Summer Break10

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 いずれにせよ、工藤にも少しは休養になったかな。
 翌日の夕方、良太は、両親と亜弓と四人、亜弓の要望で「カンパネッラ」で食事をした。
 この店が気に入ったのは良太の家族だけではなく、小笠原と母のゆかり、それに南澤一家が一緒で、また俄か親睦会のようになった。
 南澤の父親の顔を見ると、良太はつい、昔、水を浴びせられてすごすご会社に戻った時のことを思い出さないではないが、今となってはそれも笑い話だ。
 工藤の夕食は別荘で平造の手料理らしい。
 平造はきっと工藤の身体のことを考えてきっちり作っているのだろう。
 早めの夕食を取ると、それぞれの目的地や時間に合わせてタクシーを手配し、軽井沢駅まで送った。
 谷川の娘夫妻、広瀬一家と南澤一家、小杉親子、それに菊池一家、鈴木さん一家は同じ新幹線に乗るため、良太も一緒に軽井沢駅まで行った。
「楽しかったです。お疲れ様、良太ちゃん」
 そんな言葉をもらいつつ、あたふたとお土産を買う両親に付き合って、みんなを送り出すと、良太は思わず大きなため息を吐いた。
 今回良太は工藤のベンツで来ているので、勝手に動かせず、別荘まではまたタクシーを拾う。
 別荘に着くと、既に七時近く、リビングでは井上と万里子がのんびりコーヒーを飲んでいた。
「お疲れ様。大変だったわね」
 万里子が労いの言葉をかけてくれる。
 二人は万里子がオフだということで、あと二、三日ゆっくりしていくらしい。
 小笠原親子もあと一泊して、明日、ゆかりは東京へ、小笠原は真中と仕事で東北へと発つことになっている。
 森村も明日帰るらしく、今日は真中とサイクリングに出かけたはずだ。
「暑いけど、お天気よくて、いい夏休みよね」
 万里子は良太にコーヒーを入れて来てくれた。
「あ、ありがとうございます。工藤さんは?」
「食事、ご一緒して、上に上がっちゃったわ」
 そうか、一人で食べるよりはいいよな。
 良太はそんなことを思う。
「すんごい美味しかった。肉じゃがとか、天ぷらとか、茄子の煮びたしとか、平さんが作ると、何でも美味しい」
 万里子が言った。
「いやほんと、久々美味い料理、食わせてもらった」
 井上が言った。
 そこへ平造がプリンを持って現れた。
「うっわ! 美味しそう!」
 カンパネッラでもデザートは食べたものの、平造のプリンは別腹とばかり、良太もお相伴に預かった。
「万里子さん、たまにご実家帰ったりするんですか?」
 思い出したように良太は聞いた。
「うん。お正月とか? オフだったらね。式をやってないから、地元でやれとかってうるさいから、あんまり帰りたくないんだけど」
 万里子は山口県山口市の出身で、スカウトされて高校二年から東京に出てきたはずだ。
「式って結婚式?」
「そう。籍入れてから、お互いの家に挨拶行ったくらい?」
 井上は新潟出身で、両親は既に亡く、郷里には兄一家がいるだけだという。
「俺はそういう形式的なものにはこだわらないけど、万里子んちはやっぱ式くらいやれってなあ」
 ぼそりと井上も言った。

 


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