Summer Break22

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 なるほどという千雪の説明を聞いてもまだ良太はうんとは言えない。
「千雪さんはどうするんです?」
「俺も入る。名探偵やとまたメンドイから、素で芸能人みたいな顔してな。京助は会場内におって、何かあったら外に行ってもらうし」
 世に知られる推理作家で名探偵の人相風体は奇抜で、もじゃ頭に黒縁メガネで目の前の類まれな美貌を隠している。
 良太は、はあ、と大きく息を吐く。
「じゃあ、千雪さん、うちの関係者ってことにしますか」
 それを聞くと、「よっしゃ、やっぱ良太、見過ごせんやろ思うとったわ」と千雪はどや顔で笑う。
「みんなインカム、耳に入れて、連絡取るよって、加藤は念のために、待合の小部屋に詰めるし」
 千雪が良太に説明しているうち、京助は辻や白石、翔太と外での待機位置をタブレットで確認していた。
 何だかどこかのドラマのワンシーンのようだと、良太は漠然と思いつつ、帰りは歩いて別荘に戻った。
「にしたって、何だってあそこのパーティに限って事件みたいなものが起こるんだよ。千雪さんが事件引き寄せてるんじゃないのか」
 猫たちが待っていた小部屋に入るなり、良太は恨み言のように声に出した。
 まあ、財界人の重鎮が集まるというのだから、何かしら狙われる可能性もあるのかも知れない。
 というか、これまでにも何もなかったわけではないのかも。
 そう考えると、財力のある人間たちはいろいろと安眠できないことがあるのかと、良太は何だか気の毒に思う。
「その点、うちの家族なんか狙われる要素ないから能天気やってられるのかもな」
 熱海に帰った両親は、週末、川崎の菩提寺に墓参りに行くと言っていた。
 花火や軽井沢も楽しんでくれたみたいだし、何より、一家そろってご飯を食べるというのが一番だと思っている。
 と、その時、東京の森村から携帯に電話が入った。
「お疲れ様、何かあった?」
「今、清水工務店さんが来て、七階の工藤さんと良太さんの部屋、リノベするっていってるんですけど」
「え? 発注って平さん? 清水工務店はうちの会社よく来てもらってるけど」
「はい、さっき別荘に電話したけど、誰も出なくて」
「ああ、みんな出払ってたんだ。悪いけどモリー立ち会い頼めるか?」
「わかりました」
 電話を切ってから、良太は階下に降りていくと、キッチンのドアから畑へと向かった。
 案の定、平造はせっせと畑の手入れをしていた。
「平さん、清水工務店に、リノベ、頼みました?」
 すると平造は立ち上がって良太を見た。
「おう、会社、誰かいるんじゃないのか? 鈴木さんは?」
「今日、鈴木さんはお休みで、モリー一人なんで、確認で電話してきて。ってか、リノベってどこリノベするんです?」
 確か良太の部屋もクリスマスに模様替えされてからそう時間は経っていないはずだ。
「ドアを取り付けた時、昔ドアを塞いであった壁を壊しただけだったからな。壁自体をリノベしてもらうのと、バスルームと水回りもな、社屋を建てて以来だから、いい加減古くなってるし、エアコンや照明も取り替えてもらう」
「はあ、そうですか」
 全然壊れていないのにとか良太は思うものの、部屋は良太が使っていても良太のものではなく会社のものだから、良太に口出しする権利もない。
「モリーに立ち会い頼みましたから」
「おう、わかった」
 そう返事をすると平造はまた畑に取り掛かった。

 


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