月鏡4

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「いらっしゃい、どうぞ、中の方へ」
 良太は佐々木を大テーブルのソファへと促した。
「あ、これ、代わり映えせえへんけど」
 佐々木は一番町にあるオフィス近くにある老舗和菓子屋のきんつばが入った袋を差し出した。
「いつもありがとうございます! ここのきんつば、ほんと美味しいですよね」
 鈴木さんが熱いコーヒーとブラウニーを佐々木の前に置いた。
「藤堂さんが下さったブラウニーですわ。一緒にニューヨークにいらしたんですってね」
「ありがとうございます、向こうも寒かったで……」
「強行軍で大変でしたね」
 良太は笑った。
「ほんま、ニューヨークにいる気せえへんかったもん。どこ見たいうわけやない、空港からホテル行って、撮影して帰ってきただけやし」
「はあ、大丈夫ですか? 身体休めないと皺寄せが来ますよ?」
「いや、飛行機の中で爆睡したのに、夕べも早うに寝てしもたから、時差も何もないくらい」
 佐々木は巻いていたマフラーを取ってから、コーヒーカップを手にした。
「にしても、今日、風強いですよね、俺、ビル風が吹きすさぶようになると、決まって風邪引くから、気を付けないと」
 良太がしみじみと言う。
「俺は案外丈夫な体質やから、滅多に風邪を引いたりせえへんけど、ビル風は得意やないわ」
 佐々木は小首を傾げて微笑んだ。
 そんな佐々木を見て、良太はちょっとドキ、とする。
 年上の男性とわかっているのに、ただ綺麗というだけでなく、佐々木には何か不思議な艶やかさというか、時折目が離せなくなるようなところがある。
 いやまあ、本人自覚してないからなんだろうけど、無駄に引き寄せられる輩がいてもおかしくない。
 輩だけじゃないな、水野さんなんかもかなり佐々木さんに興味深々って感じだったし。
 以前、仕事で東洋商事に出向いた時に、佐々木や藤堂とともに同行したのが、音楽を担当するミュージシャン、ドラゴンテイルのボーカル、水野あきらだが、知らない相手には不愛想と聞いていたが、佐々木には最初からフレンドリーな感じだった。

 


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