月澄む空に127

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 でも、と猫たちにご飯をやりながら良太は思う。
 確かにモリーとかいてくれた方が、ありがたいかも。
 出張で海外へ行く時は、忙し過ぎて一週間くらいの日程はあっという間に過ぎてしまい、帰国したらもう日常の業務に埋没されるばかりだった。
 研修だから、それなりに忙しいだろうけど、三か月もの間、その町に滞在するというのは初めての経験だ。
 右も左もわからない街で、一人で散策するのも悪くはないかもだが、街をよく知る知り合いがいてくれるのは心強い。
 沢村もひょっとしたらいるかも知れないが、佐々木さんも一緒なら俺のことどころじゃないだろうし。
「けど、モリーの予定も聞かずに、工藤、勝手に決めちゃっていいのかよ」
 森村にも都合と言うものがあるだろう。
 例えば付き合っているソフィとのことだって。
 今のところ二人は順調のようだ。
 考えてみると、当初は工藤に誰かを紹介するための異業種交流会だったのだが、森村とソフィだけでもうまくいっているのなら、開催した甲斐があったと言えるのかも知れない。
 それに、ちょっとイレギュラーだが、香坂准教授と加賀医師が付き合うことになったのも、異業種交流会に端を発していると言える。
「あの二人、続いてるんだろうか」
 なんて余計なことまで考えたが、二人とも大人の付き合いだから、俺がとやかく言うようなこともないか、とスーツを脱いでハンガーラックに掛ける。
 シャツ一枚になって猫のトイレを掃除していた良太は、工藤の部屋へのドアがノックされたので顔を上げた。
「紫紀さんから、CMにアスカを起用する話は聞いたか?」
 顔を出した工藤がいきなりそんなことを聞いた。
 シャワーを浴びたらしく、バスローブを羽織った工藤の髪がまだ濡れている。
「何ですか、それ? 俺、千雪さんらからニューヨーク支社のプロジェクトの話を伝えきいただけで、具体的なことなんか何も聞いてないですけど」
 良太は首を傾げながら答えた。
「とすると、また紫紀さんの暴走か」
「暴走って………」
「あの人、思い立つとたったかプランをぶつけてくるんだ。今回、佐々木さんにプロジェクトのオファーをするってのが、決まったようなもんだから、たったか次の段階に進んでるらしい。今、電話があって、来期のニューヨーク支社のプロジェクトのイメージキャラクターに、沢村に加えてアスカの名前を挙げてる」
「え、そうなんですか」
 もしそうなら、佐々木と沢村が仕事でも一緒になる可能性が大だ。
「宮下さんは佐々木さんが気に入ってるからな。それに、お前が研修でニューヨークに行くのなら、ぜひプロジェクトに加わってほしいという話だ」
「はあああ? だって、ネットプライムの研修内容もまだわからないのに」
「お前も気に入られたな、宮下さんに」
「ひええええ! 冗談じゃないですよ。あのおばさん、超苦手なのに」
 工藤は苦笑する。
「フン、ただのおばさんだろ?」
 からかう工藤に、「だからやめてくださいって、今度会った時、口すべらせたらどうすんですか!」と良太はマジに抗議する。

 


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