「ちょっと羨ましいかなと」
「え、天野さん、ひょっとしたら直ちゃんとか、タイプなんですか?」
良太が聞くと、天野はしばし沈黙する。
「ああ、いや、俺、タイプ、とかは特にないんで」
ようやく言葉を絞り出すように言う天野に、「あ、すみません、俺こそ、失礼なこと聞いて」と良太は慌てて詫びる。
「いや、全然。俺、は、好きになった人が好きってやつなんです」
「なるほど」
良太が頷くと、ひとみが割り込んできた。
「天野ちゃん、今度飲みに行こうよ。ほら、六条と四ノ宮はいわば相棒みたいなもんじゃない? 放映まで一か月ってとこだし、二人の役どころをもっと深く彫り込んで、最後にきっちり締めたいじゃない?」
「あ、わかりました。そうですね」
天野はひとみの提案に真面目な顔で頷いた。
良太はそんな二人を微笑ましくも思いつつ見た。
監督に呼ばれて天野がその場を離れると、「三か月? 高広は行かないの?」とひとみはこそっと良太に聞いた。
「まさか。モリーも最初一緒に行きますし、二人も抜けたらうちの会社大変で、また工藤さんの仕事増えるのがちょっと心配で」
良太もついひとみには本音を口にする。
「どうせ仕事中毒なんだから、高広のことは心配しなくても大丈夫よ。そうじゃなくてさ…」
その先を続けようとしたひとみも監督に呼ばれたので、その先は聞かなかったが、良太にはひとみが何を言いたかったのか察しはついた。
あまりそのことには触れたくなかった。
入社以来、いくら工藤が世界を股にかけて飛び回っていたとしても、三か月も工藤の顔を見なかったことはさすがになかったから、一年とか長期でなくとも不安だけでなくやはり長く離れていると寂しい気がする。
怒鳴り声も聞けないなんてな。
まあ、今からそんなこと考えてもしかたないけどさ。
寂しいだけじゃなくて、やっぱなあ。
俺は、傍にいたからだろ。
戻ってきてみたら、工藤、誰かと仲良しこよししてたりして。
はあ。
だから考えるのやだったんだ。
「良太ちゃん、ちょっときて!」
大森和穂の大きな声が、良太の思考を遮った。
「これ、ちょっとでかすぎない?」
和穂はリビングのレイアウトで、壁に絵を飾ろうとしていた。
「うん、確かにアンバランスかも。それにこの部屋だとこの手の油絵って重い気がするんですけど」
「うんうん、やっぱそうだよね、墨絵風日本画にしよっか。グレードは下げたくないんだよね」
裏から持ってきた絵を和穂は油画と取り換えた。
「ばっちりじゃん! さすが、良太ちゃん!」
「おだてても何もでませんよ」
良太は笑った。
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