月澄む空に142

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「佐々木さん、こっちで仕事がある時は戻ってくると思いますよ」
 八木沼を慰めるように言う良太のセリフを聞きつけて、「戻って来たってお前には関係ないからな」と沢村がガキ大将のように喚く。
「ようあんないじめっ子なヤツとずっと友達やっとるわ、良太」
 開き直って八木沼が言った。
「はあ? だからあいつとはガキの頃から喧嘩ばっかだったって言ったじゃないですか。」
 良太もつい声を上げる。
「やっぱ、良太、ええやっちゃ」
 唐突に八木沼がガシっと良太をハグした。
「良太に鞍替えしようったって無駄だぞ。そいつ、面倒な相手に入れあげてるからな!」
 沢村が走りながら野次る。
「え、そうなん?」
 大きなガタイで、八木沼が良太を見つめた。
「俺のことはいいんで、今年の活躍を振り返って、とWBCに向けての意気込みをお願いします!」
 沢村を一睨みすると仕事モードに戻って良太が言った。

 
 

 『検事六条渉』の撮影が行われているスタジオに良太が顔を出すと、すかさずひとみがやって来た。
「三か月も良太ちゃんいないなんて、何だか火が消えたようになるわね」
 良太は「それ、大げさすぎません?」と苦笑する。
「それに三か月顔を合せなかったことなんかいくらもあるじゃないですか」
「あら、良太ちゃんが東京にいるってわかってるのと、いないのとじゃ、全然違うわよ」
「猫ちゃん、どうするんですか?」
 天野までが口を挟んできた。
「何年もだったら連れて行きますけど、三か月なんで、うちの鈴木さんに面倒をみてもらうことになってます。鈴木さんにも懐いてますし。まあ、俺がさみしいだけで」
 そうなのだ。
 これまでそんな長期間猫と離れたことはない。
「忘れられたらどうしよう」
 などとつい、口にしてしまう。
「大丈夫ですよ。ほら、オンラインって強い味方もありますし、あれ、ペットの見守りカメラってあるじゃないですか」
 天野の提案に、「それ、俺も考えて買おうと思ってるんだけど」と良太は答えた。
「ついでに俺もオンラインしてもいいですか?」
 天野が言うと、「私もオンラインするわ」とひとみ。
「え、いいですよ。向こうで知り合いもいなくて寂しくしてますから。あ、でも佐々木さんと直ちゃんが行くことになったんで、よかったなって」
「直子さんって、佐々木さんのアシスタントでしたよね?」
「ええ。あの二人はちょっと長くなりそうだけど」
「そっか。ここだけの話、あの二人ってカップルですよね?」
 天野に問われて、「えっと、どう、かなあ」と良太は苦し気な返答で小首を傾げる。
 まあ、いくら直子がアシスタントとはいえ、いつも一緒の二人はカップルに見られることが多い。
「あ、いえ、すみません、プライベートに突っ込んで。いや、何か、お似合いだなと思っただけで」
 天野は笑う。

 


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