「それから割とすぐ撮影に入って、しばらくして、三人が具合が悪くなった時、みんなが悪いものでも食べたんじゃないかとか、さっきのどら焼き大丈夫だったかとか、いろんなことを言ってて」
「それについては撮影が終わった後で一応説明しますが、感染症とかではなかったので、どら焼きには何も問題がなかったってことで」
いずれにしても良太の責任、ひいては青山プロダクションの責任ということになる。
これはほんとに心してかからねばならないぞ。
良太は心の中で自分に言い聞かせる。
「それが実は俺、ほんと気づくのがのろくて申し訳ないんですが、撮影中何か引っ掛かることがあって、思い出したんです、俺、トイレを出る時何気に見たゴミ箱の中の一番上に下剤の箱があったこと。それにゴミ箱の蓋がまだ揺れてた」
「え?」
「無暗に人を疑いたくはないんですが、トイレから出た時スタジオのドアを開けたのが見えて、俺とその人の間には誰もいなかったから、小宮山さんだろうと」
しばし良太は天野を見つめて言葉を探した。
やはり小宮山なのかと。
ライトを落としてあわや山内ひとみに怪我を負わせたかも知れない、いや下手をすると打ち所が悪ければ死ぬことだってあり得る、それが小宮山の仕業だということかと。
「いや、ほんと、疑いたくはないんですけど、実は俺、照明の尾形さんが監督と話しているの聞いちゃって。ライトの落下事故、故意にケーブルが切られてたって」
「え、でも、下剤の件とそれはまた別の話かも知れないですし」
「まあ、確かに、安易に二つの事件を同じ犯人がやったとは言えないかもですが」
良太は苦笑した。
「天野さん、刑事役やってるから、何か刑事みたいになってますよ」
すると天野も笑った。
「いや、そうですね、つい、刑事になった気になってました」
「とにかく、ちょっとこのことは天野さんの胸に収めといて下さい。変なことが続いたんで俺もモリーも気を付けてますから」
「了解!」
事件、だよな、故意にやったんなら。
スタジオに戻っていく天野の背中を見つめながら、良太は眉を顰めた。
その後、何も支障なく撮影は終了し、良太は解散の前に、三人は大事を取って一晩入院してもらうが、感染症ではなかったことなどを説明した。
だが、こういうことがあるとみんなが疑心暗鬼になり、飲食には気をつけなくちゃとか、ライトの落下を持ち出して、変なことが続いてるとか、口々に話している。
「すみません、監督、ちょっといいですか」
山根は良太を振り返った。
「変なことが続くので、俺も注意してはいますが、何者かが故意にやったという可能性もあるので、今日のスタッフさん、少し休んでいただいて、代わりにうちの関係者を入れてようすをみたいんですが」
「それはかまわないが、良太ちゃんとしても青山プロとしても冗談じゃないよな」
「はい、明日から入りますので、よろしくお願いします」
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