「そうですね。逆にスタジオ以外でも小宮山さんをマークしたら」
「それ、加藤さんにも言ってある。他のメンバーで小宮山さんに張り付いてくれるって」
「小田事務所でも調査してくれてるんですよね?」
「うん。何にせよこれ以上、変なことが起きなければいいんだけど」
「そうですね」
最後にはちょっと重い空気になったところを、「とにかく俺、がんばります!」と元気よく宣言して森村は帰っていった。
威勢がいいだけではなく、しっかり仕事もこなしてくれる、今や良太にとっては頼りになる後輩だ。
それだけではなく、性格もいい。
時々不思議に思うのは、この森村があの波多野の息子ということだ。
あの波多野を父親にして、どうしてこんないいやつが育ったのか。
もちろん波多野をどこまで知っているかと言われたら首を傾げざるを得ないが、これまで良太が話した限りでは頭は切れそうだし武術の達人だが皮肉屋で冷酷で、神出鬼没な怪しい男なのだ。
まあ、家族に対してはまた違う面があるのかも知れないが。
部屋に戻って猫の世話をしながら、そんなことをつらつら考えていると、携帯が鳴った。
「お世話様です。何かわかりましたか?」
藤堂からで、とりあえず今わかっているだけの小宮山の情報だと前置きしてから、話し始めた。
「小宮山さん、手練れのバイプレーヤーなのは、大抵太鼓判押されてるんだけどね。ちょっと裏をつついたら、最近あんまりいい噂がないらしい」
ギャンブル依存症はエスカレートして、俳優仲間に数十万単位であちこちで借金し、踏み倒しているとか、やばい金融業者に取り立てられているとか、裏社会に繋がっている店の女の子に入れ込んで、にっちもさっちもいかなくなってるということらしい。
「ギャラが入っても取り立て屋に流れるばっかで、ここんとこ、業界でも知ってる人は小宮山さんを使わないようにしてるって。でも、小宮山さんとしては借金があるから知り合いのプロデューサーとかに頼み込んで仕事を何とか入れてもらってるみたいだけど」
「そうなんですか。でも、小宮山さんが妨害工作をする動機って」
「実は、もしかすると黒幕Xかもって人物が浮かんだんだ」
「えっ! ほんとですか?」
良太は思わず拳を握りしめる。
「まあ、浮かんだ、ってだけで、その人物が妨害工作を小宮山さんにさせたという確証があるわけじゃないんだが………トミタエンタープライズって聞いたことある?」
「トミタエンタープライズ、ですか。うーん、どこかで聞いたことがあるような」
「そうなんだよ、どこかで聞いたことがあるくらいの弱小芸能プロダクションなんだけど、昔、そこの社長の富田さんがまだMBCにいた頃仕事をしたことがあるよしみで、前の会社の時、そこの女の子をCMで使ったことがあったんだけど、以降会社自体あまりぱっとしなくてね」
「はあ」
「それが最近、富田さんと小宮山さんが場末のスナックで一緒に飲んでるってのを小耳に挟んでね」
「え、じゃあ、その富田って人が?」
「うーん、ラスボスには役不足な気もしなくもないけどね」
「ラスボスって……え、ちょっと待って、MBCって言いました?」
さっきから引っ掛かっていたのがそれだった。
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