そうなるとやはり今回のドラマ関係者に絞られてくるのではないかと、武蔵野署も調べたらしいのだが、結局小宮山に辿り着いてはいない。
工藤から良太に電話が入ったのは、スタジオ撮影が終わり、部屋に戻った頃だった。
「お疲れ様です」
「三人病院に担ぎ込まれたそうだな」
小田とは連絡を取っているのだろう、開口一番工藤は言った。
「はい、小田さんにも連絡はしてありますが、感染症とかではなかったんですが、どうやら下剤を仕込まれたんではないかと」
良太は天野から聞いた話を伝えた。
「小宮山か」
工藤は唸るように呟いた。
「はい。天野さんの証言が事実とすれば小宮山が俄然怪しいんですが、だからと言って詐欺事件と同一犯とは言えないわけで、それに天野さんをあまり巻き込みたくないので、いずれにせよ管轄外ってことになると思いますし、武蔵野署には下剤やライトの一件は話していません」
管轄がどうとか言うとるから、事件が解決せえへんのや、とでも千雪なら言いそうだと良太は思う。
「被害にあったスタッフさんには二日ほど休んでいただいて、その間に加藤さんと山倉さんに入ってもらったので、明後日からのロケには引き続き来てもらうことになってます。俺、明後日千葉ですし」
「お前はとにかく自分の仕事をしろ。加藤がいるんならあいつに任せておけばいい」
「はい」
一応返事はしたものの、またそういう言い方をされると、良太としては面白くはない。
「また連絡する」
工藤の電話が切れると、良太は一つため息を吐く。
富田の話はなかったということは、小田の方でもまだ調査の途中なのだろう。
『猫の手』でも山之上と白石が交代でトミタエンタープライズを調べているようだが、これといって気になる情報はまだ得られていない。
ロケは三日ほど続くのだが、ロケの初日、良太はドキュメンタリーの撮影と重なり、確かに面白くないとか言っている余裕はなく、森村や加藤らに任せて早朝千葉の野田市へ向かった。
野田市は醤油の産地として有名で、全国的に有名な会社があるが、今回は大正時代上田浩一郎が創始者である上田味噌醤油株式会社の三代目上田一郎氏を取材することになっていた。
何かあったら知らせるようにと森村には言ってあるが、休憩に入るとロケの方が気になって仕方がなく、良太は携帯を無造作に見て連絡がないことを確認する。
「何だよ、良太ちゃん、心配事でもあるのか?」
良太のそんな様子を見て、ニヤニヤと下柳がやってきた。
「え、ああ、ドラマ、今日からロケなんで」
「ああ、そうか。あれ、工藤は?」
思い出したように下柳が聞いた。
「今、紺野さん関係の仕事でニューヨークなんです」
「ったく、ちょっとどころかかなりオーバーワークだろう、良太ちゃんも」
「はあ。今週は特に」
こんな時に限って何か起きなければいいけど。
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