オフィスビルが林立する汐留は巨大複合都市であると同時に今や観光スポットとしても多くの人の流通を促している。
その一つであるMBCの地下駐車場に車を停めると、良太はエレベーターで黒田と会うことになっている会議室へと向かう。
温厚そうな雰囲気ではあるが、黒田はスポンサーの顔色を窺って意見が左右されるようなところがあり、良太にしてみれば、悪い人間ではなくともあまり好きなタイプの人間ではない。
「参りましたね、撮影中に事故とは」
暗に最初から良太のせいだと言わんばかりの言い方だ。
「申し訳ありません。監督不行き届きでした」
「しかし、撮影の途中で、どうするんですか?」
「はい、これからもちょくちょく出演シーンがあるので、代役を決めて撮り直ししかないと思います」
「代役っていっても、昨日の今日で何とかなるんですか?」
黒田は不機嫌そうに言った。
「Kプロダクションの西野了さんに打診したところ、今日からでも早速入ってくださるということで、西野さんには老弁護士シリーズにも出ていただいたことがありますし、費用的なことはうちが責任を持ちますので、そこはご迷惑をおかけすることはないかと思います」
良太が断言すると、黒田も少し機嫌を直したようだ。
「そういうことでしたら、まあ、今後、面倒なことがないようよろしくお願いしますよ」
「わかりました」
よもやこの人も裏でつながってたりしないよな。
いや、金で動きそうな人だし、小宮山を推してたのもそういう理由があったりして。
良太は別れ際、黒田の後姿をチラ見しながらそんなことを思った。
「西野さんにはフル回転で申し訳ないが、今まで小宮山さんで撮影していたところも折に触れて撮っていきますから、よろしくお願いします」
山根監督も、これまで何度か仕事をしている西野となら勝手がわかっていてお互いにやりやすいと言ってくれたので、良太もほっと胸を撫で下ろした。
昨日は事故の影響で、あまり撮影も進まなかったが、良太が汐留からやってきた頃には西野はすっかり撮影陣に溶け込んでいた。
「先入観のせいだけじゃなくて、俺、西野さんの方が仕事やりやすいですよ」
天野も良太のところへやってきてわざわざそんなことを言う。
一方、良太と一言二言言葉を交わした森村は一見いつものよく気が付くAD風だが、目が戦闘モードのように険しい。
また、富田がある男と会って金を渡しているところを写真に撮ったと加藤からも報告を受けたが、その男の正体がまだつかめていないということだった。
ひょっとするとその男が轢き逃げ犯かも知れないという。
「確証がつかめればだな」
「今日はモリーと山倉、それに外回りを白石に巡回させている」
「ありがとう、助かる」
良太と加藤は頷きあった。
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