夢見月57

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 ヤバい話とか、千雪さんらにも何か面倒ごとがあるらしい。
 あっちもこっちもいろいろ大変ってことかな。
 ふと良太が工藤を見ると、ひとみや天野、アスカや秋山それに白河も交えてどう見ても仕事モードになっている。
 ったく、あのオヤジは。
 たまの花見くらい、飲めや歌えでいいじゃんかよ。
 いや、歌えはないとしても。
 まあ、以前は桜の花を目の仇のように避けてきたらしいことを考えれば、多少は工藤も落ち着いてきたのかもだが。
 それだけ時間も経ったのだろう。
 大切な人をいきなり亡くしたら、人間おかしくもなるかも知れない。
 そういえば千雪さんも、幼馴染を亡くしてしばらく書けなかったことがあったらしいし。
 たった三か月離れるだけで俺なんかおたおたしてるのに、例えばいきなり工藤がいなくなったらなんて考えたくもない。
 俺がいなくても波多野がいるから、大丈夫だろうと思うけど。
 滅多に口にはできないが、そのことも気にかかる。
 ああ、もう、気にかかることばっかじゃん。
「おい、良太!」
 思わず頭を掻きむしりたくなりつつあった良太は、工藤に呼ばれて顔を上げた。
「なんですか?」
 足早に工藤のもとに馳せ参じた良太に、「お前は何をまた百面相してるんだ。太田が前倒しを要求してきたといっても、詰まってるのは太田だけじゃないからな」と眉間に皺を寄せて工藤が言った。
「ああ、はい、大まかに皆さんのスケジュールがどうなっているか教えていただければ」
 確かに、四月の渡米までカウントダウンが始まった良太にとっても、わざわざアポを取って集まってもらうまでもなく、幸か不幸かここに主要メンバーが揃ったわけで、スケジュールのすり合わせをしておけばいい話だ。
 今度の映画は原作が検事六条渉と老弁護士シリーズのコラボということで、ドラマが放映されているMBCが出資し、主演はひとみと端田武、大澤流、それに天野右京やアスカも加わることになっている。
 そして原作者である千雪が選んだ白河優菜と太田美香子が主要な人物として競演するということになると、広告宣伝の方向性もまた変わってくる。
 コラボでただでさえ主役が一人ではないところへ、主役級の白河と太田に良太がオファーしたベテラン勢も名が知れた大御所級のメンツで、えらく華やかな様相を見せてきた。
「大澤はどうだ?」
 工藤が良太に聞いた。
 ここにいる面々のスケジュールは何とか合わせられそうで、良太もほっとしたが、端田は合わせますよ、という鷹揚な返事だったものの問題は大澤だった。
 最近は仕事を選んでいるらしいがそれでもスケジュールは数年先までという話だ。
「ええ、映画のオファーは快諾してくださったんですけど、早速スケジュールの件で連絡を入れた時は、近々返事をするってマネージャーの田村さんが渋いお返事で」
 良太は端的に答えた。
「田村さんて、大澤監督の下にいた人でしょ。大澤くん大御所扱いしてやたら文句つけてくるみたいね」
 白河が言った。
「大澤、マネージャ替わって最近何かとやりにくいってこぼしてたし」
 アスカも頷いた。
「所属事務所が大きいですからね、前の細川さんの時は同年配で自由にやってられたみたいですけど」
 秋山も追随した。
 

 


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