Act 8
朝から雲ひとつない青空が広がっていた。
時折、こんな日に部屋の中にいなければならない状況を嘆きたくなる。
パソコンの画面を睨みつけながら、思わずあくびが出てしまう。
仕方なく、缶コーヒーを買ってきた千雪は、椅子に座るとプルトップを引いた。
「随分お疲れのようだね」
助教と話し込んでいた宮島教授に声をかけられ、千雪は苦笑してコーヒーを飲む。
夕べは結局ファミレスで渋谷の話を聞きながら二人だけの作戦会議となり、今朝は今朝で一芝居うってきたところだった。
何やら一芝居、というキーワードが昨日からついて回っている。
下手くそな英語を使うよりはマシだったものの、何で俺が? という疑問も起きないではない。
事件の方は渋谷がひとり調べまわっていたのだが、無罪を主張している被疑者真山には不利な状況が続いていた。
老女が殺害されたと推測される夜八時から九時の間、真山は渋谷をふらついていたと証言しているが、それを証明してくれる者はなく、唯一、真山がホテル街で知ってる女を見かけたというのだが、聞き込みに出向いた刑事によると、女は真っ向から否定した。
女は真山とは高校時代のクラスメイトだという話だが、今は上流家庭の主婦で幼稚園に通う子供がいる。
その時間は大学の友人とその友人の家で食事をしていたというのだ。
「真山が見たと主張している女友達は頑として知らないの一点張りで。でも否定するのも当然かなと。ダンナは衆議院議員の息子で秘書なんですよ、で、次期衆院選には父親の地盤を継いで立候補予定とかで。ホテル街にいたなんてね」
「口が裂けても言わへんやろな」
「浮気相手特定するのもちょっと時間がかかりますからね」
しかも、足が不自由な老女のところに通っていた介護士から、真山が老女の家近くの公園の植え込みに何かを押し込む姿を見たという証言が得られ、捜索したところ血のついたジャケットと包丁が発見され、それが老女のキッチンから持ち出されたもので、凶器であることに間違いはないのだった。
ジャケットは真山の物だと判明している。
包丁はふき取られていたせいで指紋は発見されなかった。
さらに聞き込みをしたところ、何人かが真山を見たと証言している。
「預金通帳とかにも手をつけてないし、動機を考えると、真山しかいないってことになってしまうんだけど……」
老女が亡くなった場合、真山の両親も亡くなっている今、老女には他に子供もいないため真山が土地家屋含めて約五千万相当という老女の遺産相続人であることなどもあって、警察は真山の容疑を確信していた。
だが、真山が犯人ではないと仮定した場合、真山が何かを老女の家近くの公園の植え込みに何かを押し込む姿を見たという介護士の証言は嘘かあるいは見間違いだということになる。
渋谷はこの介護士の田辺という男を調べていた。
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