「ちょっかいはちょっかいだ。しかし因果応報ってやつだな。そんな昔の所業のせいでお前をあんな野郎に取られるところだった。千雪から、土方にお前が脅されているらしいって聞いて、俺は自分を呪ったぞ」
「工藤さん…」
良太は伸ばされた腕にすがりついた。
確かに工藤が自分を見てくれているのだとは思うのだ。
「俺が、他に好きな人がいるっても、てんで平気で、他の誰かを好きになるななんて誰が言った、なんて言ったくせに……っ」
工藤は良太の顎を掴んでキスをする。
「大人は見栄でも張ってないと生きていけないんだ。社長がおたおたしてちゃ、会社も心もとないだろう」
ゆっくりと良太の服を脱がせながら、工藤は徐々にその熱を高めていく。
「……なんか使い古した言い訳ってやつだろ」
工藤は鼻で笑う。
だが土方を殴り倒した時の工藤の怒りの形相を思い出すと、良太は申し訳ない気持ちになる。
「俺、あんたじゃなきゃ…………いやだ」
好きな人だとどうしてこんなにひどく熱くなるのだろう。
「ああ。わかったから泣くな」
工藤は細い腰を抱く。
熱をもった肌は手のひらにすんなりと馴染む。
身体をつなげると、少しだけ苦しそうな顔を見せるが、やがて愉悦の表情に変わる。工藤の愛撫を覚えている身体が甘く蕩けていく。
「二度と、あんなクソヤローに近づくじゃないぞ!」
工藤の呟きは良太の心を一層切なくさせた。
繋げた身体を工藤で一杯にして、良太は意識を手放していた。
眦に残る涙のあとを、工藤は指でなぞった。
怒りに任せて我を忘れて夢中で貪り食らったらしい。
良太の肌に残る痕がそれを雄弁に物語っている。
青くさい高校生じゃあるまいしとは思うものの、土方のことを考えると殺しても飽き足りない。
もう何の悩みもありません、とでも言いたげな良太の寝顔を工藤はしばらく見ていたが、傍らの椅子に引っ掛けておいたパジャマのズボンをはいてベッドを降りた。
あの、クソヤロー!
思い出してもはらわたが煮えくり返りそうだ。
良太の一本気なところにつけこんで苦しめたことが許せない。
気を静めようと、ラム酒をグラスに注ぐ。
「工藤…さん…」
「……飲むか?」
振り返った工藤に、良太はコクリと頷く。
土方のことだけでなく、またぞろ京助に対しても怒りがわいてくる。
あのクソバカ野郎!
眉間の皺はしばらく取れそうにない。
「京助のやつ、他に何を言ってたって?」
「工藤さんに…千雪に不埒なマネをさせるな、って」
差し出されたグラスを受け取りながら、ぼそぼそと良太が言った。
「あんのヤロウ!」
今度は口にして、苦々しい思いを噛み締めながらも、工藤はグビリと酒を飲む。
くっそー、ほんとに昔の所業の報いってやつか…
綾小路京助が千雪を伴って良太のところに本当に謝りにきたのはそれから二日後のことだった。
謝る、といっても上から目線のえらそうな態度はそのままだったが。
一方、頬の青痣が残る土方と工藤が講英社で出くわしたのもその頃だ。
「ちょっとした遊びのつもりだったんだが、あんたの良太、気に入ったぜ」
不遜な発言に工藤が、「何だと?」と詰め寄ると、土方はさっと後退る。
「おっと、そうそうあんたのパンチはごめんだからな。言っといてくれよ、オヤジよりいいぞってな」
「きっさま、とっとと失せろ!」
平然と肩を竦め、土方は身を翻して走り去る。
工藤は、その後ろ姿に呟いた。
「オヤジを甘く見るなよ、クソガキが」
―おわり
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