真夏の危険地帯18

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 雛子との関係は昔から変わらず仲は良い方だろう。
 多分、恋人が男だと告げたとしても、雛子はさほど驚かないに違いない。
 のんびりとしているようで、実は元気などよりよほどどんと構えた性格なのだ。
 ともあれ、さっき雛子が二日酔いかと聞いたのには、何も言わないで朝帰りして、しかもリュウの散歩の時間にも遅れるなんて、といういささか叱責のニュアンスが混じっていたのだ。
 全く、あのヤロウのせいだ!
 また怒りの矛先が豪に向けられる。
 大抵、食事のあとは豪の家に行って、ベッドになだれ込むのがパターンになってきている。
 夕べのはしかし、そんな甘いムードはそっちのけで、交わす言葉も少なく豪が突っ走り、力にまかせて元気をねじ伏せてやりまくったのだ、思い出しても腹立たしい。
 そこに豪への思いがなければ、強姦罪だ。
 豪は明け方まで元気を離そうとせず、お蔭で身体はガタガタだ。
 一応、豪に黙ってライブに出たことはまずかったと、元気も思っている。
 だが、勝手に一平に嫉妬して、勝手に怒って力ずくは度を越している。
 時々ブツブツと独り言を口にする元気を不思議そうに見上げるリュウに気づいて、元気はやっと笑みを取り戻す。
「ようし、軽く走るか? リュウ」
 ワン、と返事を返すリュウと、既に暑い太陽の陽射しに挑むように、元気は川べりを駆けだした。

  

 伽藍に思いがけない訪問があったのは夕方近くになってからだ。
「よう」
 グレイのTシャツに生成りのチノパン、やはり生成りのジャケットを羽織った男はフレームレスの眼鏡をかけていた。
 大学時代は髪を長くしていたこともあったが、一度切ってからはずっと短めに揃えている。
「珍しいな、常に多忙なみっちゃんが」
 軽いスニーカーのせいか、音もたてずにすっとカウンターのスツールに座ったみっちゃんは、一人でいると人気グループのメンバーであるような気配をすっかり消して、かろうじて髪の栗色が普通のサラリーマンではないと思われる程度だ。
「いや、もとはと言えばこっちが頼み込んだ話だし、ちょっと大ごとになっちまったからな」
 言葉遣いも静かで目立たない。
「今更、よく言うぜ」
 元気はコーヒーを入れてみっちゃんの前に置いた。
「あ、俺が最初から想定済みでやったとか思ってるな?」
「じゃないのか?」
「正直半分は予想外。アンコールだけだと侮っていた。こんな超短時間で情報が浸透するとは、俺の脳ミソもひからびた」
 苦笑いするみっちゃんに元気は怪訝な視線を向ける。

 


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