真夏の危険地帯3

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「GENKI」のオリジナルメンバーで今はペンネーム「G」で曲を提供してくれている我が社の嘱託社員かつ株主、ただし社外秘、涼子は葛城に元気のことをそう簡潔に紹介した。
 学生の頃からメンバーは涼子に頭が上がらなかった。
 「GENKI」の発足は高校時代からバンドをやってきた一平が元気を巻き込んで、なおかつ元気からバンド名を取って始めたK大の学生メタルバンドだった。
 ボーカルの鈴木一平、ギターの岡本元気、ベースの古田光彦がオリジナルメンバーで、そこへドラムスの木田雅人が加わり、マイナーで既にかなりの人気を得ていた。
 人気が出たのは半分は一平や元気の素人離れしたルックスにあるだろうが、半分は古いといわれようがダサいといわれようが、その実力と音重視の骨太メタルを頑固に貫く一貫した音楽性に共感した一途なファンのお蔭だろう。
 当時から彼らの音楽が好きでビラまきからスタジオやライブハウスの手配など協力してくれていたのが涼子だ。
 女としての武器を最大限に利用して面倒なオーナーを言いくるめるかと思えば、理路整然とした理屈で言い負かしたりと、はっきり言って頭が切れる上に度胸が据わった姉御肌で、みっちゃん即ち光彦とは高校時代からの腐れ縁らしく、くっついたり離れたりしていたが、最近は長く続いているようだ。
 ともあれ「GENKI」がいよいよメジャーデビューという時になって元気が突然、田舎に帰って亡くなった父親の店を継ぐと言い出して脱退したものの、新たにギタリストとして斎藤正を迎えて「GENKI」は勢いよく船出した。
 当時、「GENKI」が所属していたのは比較的大手の事務所で、デビュー直後から主に一平のルックスと存在感を売りにした戦略は、メンバー全体の実力というしっかりとした土台の上にあって大成功といえた。
 だが契約期限に近づきつつある頃、メンバーは事務所からの独立を画策し始めた。
 事務所のあくまでも一平のルックスやカリスマ性を重点的に売るという、一平とそのバックバンド的な扱いにメンバーの中で次第に軋轢がうまれていたからだ。
 それはギャラ的にもはっきりと表れていたし、どうやら事務所側はそれでバックバンドが脱退したとしても、代わりのバックバンドを補充して一平をタレント、俳優的にも売り出そうという路線へ仕向けようとしていた。
 これに嫌気がさしていたのは当の一平だ。
 寄らば喰う肉食系の典型のような一平に、次から次へと女を与え、贅沢をさせ、いつもながらのああしろこうしろには揉み手をしてその望みを叶えてやることで、事務所は一平を操っていた。
 いや操っているつもりになっていた。
 だが、もともと自己中、自由奔放なだけの一平が、いつまでも事務所の言いなりになっているわけはなく、実際、最近一平の彼女と大きくマスコミを騒がせた売れっ子タレントは事務所の意向とは関係なく勝手にくっついた他の事務所の所属で、いくら事務所の所長やらマネージャやらが別の女を与えようとしたところで、一平にとってはどうでもよかった。


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