青山プロダクションの主な業務内容は、タレントの育成、プロモーション及びテレビ番組、映画の企画制作である。
弱小とはいえ数人のタレントを抱えたこの会社の社長工藤高広は、自身は敏腕プロデューサーとして業界に名を馳せている。
所属俳優も志村嘉人、中川アスカ、小笠原裕二、そして新人の南沢奈々と、業界でもトップを争う逸材ばかりで、この規模の会社としては安泰といえよう。
良太も秘書兼運転手から最近ではプロデュースの仕事も少しずつやらせてもらうようになった。
現在週一で放送中の夜のスポーツ情報番組『パワスポ』がそれだ。
今までCM出演やドラマにちょい役で出演などというイレギュラーなものまであったが、彼自身の意気込みとしては工藤を目標として勇往邁進中、なのだ。
実際のところは、社員数がタレントを入れても総勢十名程度の会社である、各々やれることは何でもやらないとまわっていかない。
くそぉ、俺だって、夏休みくらい欲しいさ! けど、夏休み、なんて言葉はこの会社にはないんだっ!
工藤と打ち合わせをしながら、良太は心の中で愚痴る。
「それから、俺の予定ですけど、明後日早朝からパワスポの録画撮りがあるので、明日は十九時発ANA37便で大阪です。戻りは明後日大阪十二時半発の新幹線で、東京着が十四時半だから、十五時半までには……」
何しろこの会社に入社しようという者はかなりのツワモノか、それなりの事情がある連中ばかりである。
社長の工藤には、敏腕プロデューサーという肩書きの他に、知る人ぞ知る、広域暴力団中山組組長の甥という、如何ともしがたい出生の事実があるからだ。
たとえ本人がきっぱり縁を切っているとしても。
ただでさえ忙しいところへもってきて、元の所属事務所社長にギャラ等を持ち逃げされ、つい最近、青山プロダクションに移籍したばかりの小笠原は、彼のマネージャーを募り、何人も面接したにもかかわらず、ことごとくケチをつけて、散々ごねまくっていた。
ようやく決まったマネージャーが真中秀喜だ。
結局正規のルートではなく、工藤の腹心平造絡みで工藤が決定を下したのだ。
母親を亡くして意気消沈していた真中のところへ、ずっと音信普通だった父親が怪我を負って転がり込んだのは、大学を卒業したものの就職が決まらず、フリーターで暮らしていた矢先のことだ。
中山組組員だった父親は間もなく亡くなるが、葬儀を仕切る中山組組員や事情聴取にくる警察やらのために、真中はアパートを追い出されるはめになった。
文字通り路頭に迷い昔のワル仲間に再会し、渋谷でたむろしていたところを、今度はまた雰囲気は違うが明らかに堅気じゃないという男に車で連れて行かれたのが、工藤の腹心である平造が管理している軽井沢の別荘だった。
真中はそこでみっちり平造にしごかれ、有無を言わさない工藤の一声で小笠原のマネージャーに決まった。
ただし、工藤はもとより、平造や彼を車で平造の元に送った谷川をみんなひっくるめて『ヤクザ』と、真中が恐れまくっているのは、元警察官である谷川にとっては甚だ心外であるのだが。
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