「おお、やっと現れたね、良太ちゃん」
オフィスのドアを開けるなり、能天気な声が良太を出迎えた。
「藤堂さん、いらっしゃい」
「さきにいただいてるわよぉ」
窓際の大テーブルでは、アスカが大きな口を開けてスプーン一杯のメロンをほおばっている。
人気女優があんな大きな口を開けてバカバカ食べていいものだろうか、と良太は常々思うのであるが、当のアスカはいっこうに気にするものではない。
「藤堂さんにいただいたのよ、夕張メロン。おもたせで失礼、藤堂さんも召し上がってくださいな。良太ちゃんもこっちに来ていただいたら?」
鈴木さんが切り分けたメロンの皿をトレーからテーブルに置いた。
「よく冷えてるし!」
アスカは呟きながらまたスプーンでメロンをすくう。
「でも、アスカさん、三時からドラマの撮影じゃなかった? 秋山さんは?」
良太はテーブルにつきながら腕時計を見る。
あと十五分で三時になろうとしている。
「下で待ってる。ちょっと工藤さんに用があったんだけど、いいわ、今日は」
工藤よりメロン、というわけか。
あっという間に平らげたアスカをため息混じりで見ながら、良太もメロンにありつこうとした。
「こら、何やってる!」
ドアが開いて秋山が顔を出した。
明らかに剣呑な表情でアスカを睨む。
「メロン食べるくらいいいじゃない」
「また遅刻だろうが、さっさとしなさい」
「ご馳走様、藤堂さん!」
秋山に注意されようがアスカは悪びれもせず、オフィスを出て行った。
またね、と手を振る藤堂はにっこりと笑顔をみせる。
「ん、うまいい! どうしたんですか? このメロン」
一口ほおばって、良太は藤堂を見た。
「昨日出張で北海道に行ってきたんだ。そこでうまそうなメロンを見つけたから、これは良太ちゃんにあげないとと思ってね。ちゃんと持ってくる前に冷やしておいたんだ」
「藤堂さんって気配りの方ですよねぇ」
得意げにのたまう藤堂を、鈴木さんがちょっとよいしょする。
「いやいや皆さんにはお世話になってますからね~。ところで、工藤さんは今日は?」
にこにこと答えた藤堂は良太に向き直って聞いた。
「上にいますよ。そういえば、工藤さんもこのあと札幌行くんですよ」
「ああ、志村くんのドラマのロケね。あれ、前評判いいよね。良太ちゃんも行くの?」
「いえ」
「じゃあ、今夜飲みに行こうか? 鬼のいぬ間に」
藤堂はにこにこと誘う。
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