「わかった、河崎さんも西口さんも、三浦さんもいないんでしょ?」
良太はスプーンをとめることなく口にする。
「おや、どうしてわかった?」
「藤堂さん、かまうヒトいないと、ここにくるから」
「何をいうかね、この子は。良太ちゃんはかまいたいヒトの筆頭だよ?」
嬉しいとは言いがたい台詞を発する藤堂は、とにかくやたらとかまいたがりな男だ。
人一倍好奇心も強い。
その実、うわべばかりに気をとられていると、中身は切れ者だったりするので、油断がならない。
「うーん、今夜はやめときます。明日は羽田に工藤さん迎えに行ってまたとんぼ返りで大阪ですから。パワスポの撮りで」
「それは残念だね~じゃあ、また今度ね」
藤堂は自分の分のメロンをスマートに食べ終えると、立ち上がった。
「もうお帰りですの? 社長にお会いになりませんの?」
鈴木さんが声をかける。
「いや、特に用はないので。これ以上長居してまた雷を食らいたくないしね」
そういう藤堂は意味ありげに良太にウインクをしてみせる。
ドアを開けかけて、あ、とまた良太のところに戻ってきた藤堂は、「ところで」と言いつつ声を潜める。
「いつぞや会った美人さんは、時々はここにもくるの?」
「へ?」
しばし考えて、良太ははたと思い当たる。
「え……と、いや、そんなには……」
「まだ出し惜しみしてるし。俺にまで良太ちゃん水臭いな」
「この場合水臭いというのはあまり妥当でない気が……」
良太は誘導尋問に引っかからないように答えながら、苦笑いする。
「まあいい。それについてはまた今度、ね」
オフィスを出て行く藤堂の後姿を見つめながら、やはり、侮れない、と良太は再認識する。
藤堂と入れ替わるように、身支度を整えた工藤がオフィスに現れた。
「あら、工藤さん、お出かけ前に、メロン、召し上がりません? 藤堂さんがくださったんですよ」
「いや、今はいい。コーヒーをもらえませんか」
「わかりました」
鈴木さんがメロンを食べ終えた皿をトレーに載せてキッチンに引っ込むと、「藤堂が何しにきたんだ?」と工藤はすかさず良太に訊ねる。
「夏のご挨拶に寄ってくださったんですよ。工藤さんお忙しそうだからって、たった今帰っちゃいました。おいしかったですよ、夕張メロン」
フンと面白くもなさそうに工藤は鳴り出した携帯を取る。
忙しい時は近くにいてもまともに話もできない。
とりあえず、真中が会社に入ってくれたお陰で良太は小笠原のマネージメントの仕事からは解放され、寝る間もないごとき状態からは脱した。
当初、志村担当であるベテランマネージャーが小笠原の面倒もみていたのだが、志村をどうしても優先させるため、そういう時、良太か工藤が動くしかなかったのだ。
真中はマネージャーというよりまだまだ付き人みたいなものだが、小杉に指導を仰ぎながら彼なりに一生懸命のようだ。
「車、まわしてきます」
良太は先にオフィスを出て、エレベーターに向かう。
駐車場から工藤のジャガーをエントランスに回すと、良太はエアコンを入れて工藤を待った。
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