夏を抱きしめて13

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『ええ、お友達の結婚式が、明日だったと思うけど』
「あ、そう、ですか、すみません」
 慌てていたのでどこに泊っているかも聞くのを忘れた。
 元気の母は当然眠そうな声だったから、まさかまたかけ直すわけにもいかない。
「結婚式って、んなこと何にも言ってなかったじゃんかよ」
 もう一度、携帯を呼び出してみるが結果は同じだった。
「あ、みっちゃん!」
 焦りまくって携帯を落としそうになりながら、わずかな希望を抱いてかけたのはみっちゃんの携帯だ。
「あ、あのっ、元気、東京来てるらしいんだけど、結婚式って、みっちゃん、聞いてる?」
「結婚式? へえ、元気誰と結婚すんの?」
 藁をもすがる思いで聞いた豪に、容赦ない言葉が返される。
「みっちゃん……、だから友達の、結婚式に出席してるらしくて」
「んなもん、元気に聞いてみればいいだろ?」
「それが、電源切ってて、さっきかけてきたみたいなんだけど、俺、ADの葉子ちゃんに頼んじゃって……、きっと、何か、また誤解されて……ったく、どうしたらいいんだよ!」
 支離滅裂なことを口走る豪にみっちゃんは尚も突き放した言葉を投げかける。
「ちっともわからねんだけど」
 豪はようやく経過を一通り説明し、元気の居所がわからない上、仕事中ADの葉子が元気がかけてきたらしい電話に何と言ったかわからないが、ひょっとして何か誤解して電話に出てくれないのではないか、結婚式のことは元気の家に電話をして母親に聞いたのだが、誰か元気の居所を知っている人間はいないか、と訴えた。
「そりゃ、お前、もうアウト、だな。その女のことてっきり例の女優だと完全に思い込んだな」
「アウト…って、そんな、だからっ全然違うっていってるだろ!!」
「うっせぇよ!! お前俺に喚いても。こっちで結婚式っていや学生ン時のダチかな。将清か優作に聞けばわかんじゃね?」
「………え………同期の確か毛利さんとか? って俺、面識はあったかもだけど、連絡先なんか知らないし………頼む! みっちゃん、聞いてもらえねぇ?」 
「しゃあねーな」
 みっちゃんは面倒くさげにかけ直すと言って切った。
 待っている間は何時間にも思えて、豪はイラつきながら、車の周りをぐるぐる歩いていた。
「だめだ、出ねぇ。あれじゃね? あいつら雑誌編集部にいるから、今校了とかで携帯どころの騒ぎじゃないとか? 留守電にはいれといたけど」
 待っていた電話は朗報とは程遠かった。
「はあ、そっか……」
 豪はガックリと肩を落とす。
「やつらと連絡取れたら、そっち知らせるさ。それより、元気が来てるのなら一度話しておこうと思ったんだが、お前、知ってるか? 元気の海賊ライブCDが出回っていて、『幻のギタリスト』とかって妙な噂になってんの」
「な……んだよ、それ……ちらっとそんな話耳にしたことあるけど、それって、GENKIじゃなくて元気のことなのか?!」
 嫌な予感、というのはこういうことをいうのだろう。
「俺もそれ手に入れて聴いたんだけど、確かにやばい、って感じで」
「何だよ、やばいって!」
 みっちゃんの話は、豪にとっても胡散臭げなものだった。

 


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