赤坂にある老舗のホテルで行われた佐野、三田家披露宴には、総勢二百名ほどの出席者があり、その多くは銀行関係者や新郎の父親が大手企業の要職にあることもあってか、業界関係者もチラホラいた。
元気と一緒のテーブルを囲む江川や新郎の友人として代表でスピーチした毛利もマスコミ関係者だっただけでなく、この七人の大学の友人席は周りの特にご婦人たちの注目を浴びた。
後ろできっちり長い髪を結わえている元気は堅気には見えないし、将清を筆頭にイケメン揃い。
しかも内五人が独身とくれば、二次会でも新婦のご友人たちの注目度は更に上がった。
佐野は元気に会えたことをほんとに喜んでいるようで、紹介された可愛い奥さんもよく笑う。
「驚くなよ、実は、あの超有名なロックグループGENKIのオリジナルメンバーなんだ、元気は」
銀行員になってもう四年目、役職も与えられているはずの佐野だが、まるで当時と変わらない。
育ちがいいというのだろうか、素直で純朴なまま、頬を高潮させて自分のことのように、新妻に自慢している。
「え、ほんと? 今はやってらっしゃらないの?」
「ええ、郷里で親の残した店をやってます」
元気はことさら強調する。
「今はロック界じゃ、幻のギタリストっていわれてるくらい、すんごいんだ、元気のギターは。だって、ほら、GENKIって実は、元気の名前からきてるんだぜ」
「何だよ、その、幻の何とかって」
「そう、幻のギタリスト、元気、って、ロック界じゃカリスマ的存在よ」
苦笑いする元気の横から、ワイングラスを持った毛利がやってきて付け加える。
「おい、いい加減なこと、言うなよ」
元気は将清に怪訝な顔を向ける。
「知らぬは当人ばかりなりってな」
「何だよ、それ」
元気は眉を顰めた。
郷里に戻った時にその世界からはきっぱり足を洗ったつもりだった。
だから、今更GENKIのことを言われるのもあまり歓迎しない。
「お前さ、冬あたりに下北沢のライブハウスで何とかってバンドとセッションしただろ? しかもそこへ一平が現れてお前をかっさらったと」
「何で、そんなこと……」
将清が知っているのだと元気は訝しむ。
「そん時の海賊版ライブCDが密かに流れてて、ここんとこかなり売れてる」
「ウッソだろ?」
元気には寝耳に水の話だった。
「GENKIからすれば、お前はメンバーじゃないから阻止しようがない。一緒にやった何とかってバンドはお陰で客の入りがいいんで、文句のいいようがない」
「お前、スポーツ誌の編集だろ? 何でそんなこと」
「でなくても自然と耳に入るよ。俺も地味な美術雑誌の編集だけど」
江川までが話に割り込む。
「だから、みっちゃんとか、Gコーポレーション社長の浅野がその情報を懸命に抑えてるって話。お前のために」
「何で俺のためだよ?」
「業界内のプロダクションがお前を探しているって噂があって」
「はあ?」
ますます話がこんがらがってくる。
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