鬼の夏休み15

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「フン、同類やん」
 千雪がここぞとばかりに言い放つ。
「喜ばないでください。料理と言えば、宇都宮さんもできるんですよ、てきぱきとアクアパッツァとか」
「へえ、てか、宇都宮さんとそない親しいん?」
「え、いや、ドラマの合間に、宇都宮さんちで鍋やったんです。ひとみさんとか須永さんとかと一緒に」
 広い部屋の真ん中で四人で鍋を囲んだことなど、良太はその時のようすを千雪に手短に話した。
 その横で工藤は紫紀と話し込んでいた。
 小夜子は誰かに呼ばれ、笑顔を振りまいている。
 たまに聞こえてくる単語から、工藤と紫紀の話はどうやら新しいドラマのことだと良太にも分かった。
 やっぱね、工藤がパーティとか、何かあると思ったよ。
「アクションと医療のバディものですか。私、アクション好きなんですよ。面白そうじゃないですか」
「まあ、坂口がえらく前のめりで、娯楽に徹したものを作りたいとか」
 紫紀が乗り気らしいことに工藤は苦笑した。
「いいんじゃないですか? 何か意味のあるものでなくとも、見るとスカッとするとか、しばし日常を忘れられるとか。それで医師役が宇都宮さん?」
「ええ、打診しているところです。刑事役にはうちの小笠原でいこうと」
「なるほど、雰囲気が違うお二人だし、決まったら応援させていただきますよ」
 良太にはよくわからないが、紫紀と工藤は妙に息が合っているらしい。
 東洋商事のバックアップがあれば、結構思い切ったこともやれる、と工藤は計算しているのだ。
 宇都宮の医師役というのも、現在撮影中のドラマ『田園』での医師役が視聴者に印象付けられることで、次の医師役もすんなり受け入れられる可能性大だ。
 そういえば小笠原の刑事役にしてもなぜ今までなかったのかと思うくらいはまりそうだ。
 とはいえまた坂口さんか。
 調子のいいオッサンだけど、まあ、憎めないというか。
 良太は聞こえてきた内容からそんなことを考えていた。
「へえ、新しいドラマ? いつから?」
「いや、俺も今聞いたばっかで」
 千雪に聞かれたが良太にも答えようがない。
「いずれにせよ、来年以降の話だと思いますけど」
 ボソボソ話していると先ほどのバイトの女の子が焼きあがった肉や野菜が盛られた皿を届けにやってきた。
「京助さんから、ちゃんと食べるようにとおことづけです」
「ありがとう」
 千雪が体裁だけの礼を口にして皿を受け取った。
 工藤や紫紀も別のバイトから皿を受け取っている。
「学生のバイト?」
 東洋グループ総帥の屋敷で、セキュリティ的なことが良太は気になったのだ。
「せや。京助がバイト探してんの知って、公一さんが大学の後輩とかに声かけて」
「なるほど。速水さんとか、理香さんとかも来てますね」
 二人ともスキー合宿の時に知り合った京助の友人だが、見回すと知った顔が何人かいる。
「夏は海外やらで遊びまわってるような連中がほとんどやけどな、綾小路の知り合いとか、親戚とかも。財界の二世なんかも顔見せてるし」
「つまりセレブ二世というか、次期経営陣、みたいな?」
 千雪が顔を向けた方に目をやると、良太は納得した。
 


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