鬼の夏休み16

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「せやな。あとはほら芸能人や業界関連もいてる」
 良太はそれらしい一団に目をやった。
「ああ、浜田しおりとか岸紘一郎とか、大御所俳優ですね。あれってスズキエンターテイメントの鈴木社長でしょ」
 スズキエンターテイメントは古くからの大手芸能プロダクションで、良太もそこの社長は何かのパーティで顔を合わせているが、いかにもな偉そうな顔をした恰幅のいい男だ。
 事務所の若手女優や若いイケメン俳優数名を従えている。
「笑える話、あの人、正月に京助が俺とのことぶちまけてから、京助は男が好きらしいとか誰ぞに聞かされたらしゅうて、前は自分とこの女優陣けしかけようとしよったのが、今度は若いイケメンも引き連れて現れよったもんやから、京助のやつ、超不機嫌で紫紀さんの客やから何か言いたいの我慢して鬼の形相で鈴木社長睨み付けてん」
 良太は吹き出した。
「京助さんもいい迷惑ですね、それって。しかし取り入ろう精神丸出しでよくやりますね、いくら業界人でも」
「いや、何せ、紫紀さんが工藤さんと仲がええのんは事務所のタレント使うてるに違いないとか思い込んで、的外れな売り込みしよるんやろ」
 確かに裏では枕営業などというやり方が未だにまかり通っているところもあるらしいとの噂もある。
 工藤もキー局にいた頃は、言い寄る美人女優を片っ端から食ってたなんて話もあったのだが、実際のところはどうなのか、良太も工藤に直接聞いたことはないし、聞きづらい。
「鈴木社長の隣は大手不動産会社社長の関谷。この屋敷の隣に別荘があるから声かけざるを得ないいうか」
「俄かセレブもいるみたいですね。あの髭の人、ベンチャーの社長でしょ? 今年急激に業績が伸びた」
「そういう人もいてるな。知り合いに声かけてもろてきてるみたいな。アパレルの社長、高瀬ゆりことか」
「ああ、あの美人?」
 髭のベンチャー社長と話し込んでいる深紅のドレスの女性を見て良太が言った。
「女は化けよるからな、誰もが美人に見えるんや。夜のパーティなんか特に」
「それ女性の前で言わないでくださいよ、千雪さんに言われたら立ち直れなくなりそう」
 化けなくても夜じゃなくても美人でしかも男とか、しかも芸能人じゃないとか、そんな人間そうそういるわけはない。
「いや、いた、もう一人」
 良太は先月の大阪の撮影のことを思い出した。
「何がいたんや?」
「だから男で美人って」
「それって佐々木先生のことやろ? あの人は文句ない美人やな。しかも天然気質」
 千雪が言うか、と良太は笑うしかない。
「あの人、あんましわかってないやろ? 自分のことも周りも、興味ないもんは知らんみたいなアーティストやから。少なくとも俺はもうガキの頃からわかっとるわ。美人やとかいわれつくしとおる。やから嫌いやってん自分が」
 フンっと千雪は吐き捨てるように言った。
「はあ、それで大学デビューですか」
 良太はなるほどと頷いた。


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