「手分けして探してどこか、談話室、空いとるよな? あそこに連れてこよか」
聞いてきた京助に千雪が提案した。
「談話室か」
緊張しながら良太は呟いた。
「誠が窃盗犯二人、自分の車で連れてくる、言うてた。諏訪の森公園あたりで追いついたらしい。車はダチに丁重に運転させて持ってくるて。傷つけたりはしてないやろ、売り物にするんやったら」
「千雪、車が戻るまでここで待ってろ。戻ったら、一応中点検してから、田口に言って客人に車を返せ」
京助が言うと、千雪は「せやな」と言って、携帯で誠にその旨を伝えるため電話をかけ始めた。
「良太、小谷を見つけて、京助が呼んでるとか言って、連れて来い。俺は村野を探して連れてくる」
京助の命令に、良太も真剣な顔で、わかった、と頷いた。
良太はホールに戻って、招待客の間をかいくぐるようにして小谷を探した。
千雪も京助も招待客が大勢いる手前、大事にしないようにと静かに動いているらしい。
それにしても千雪の推理力というか、想像力にはあらためて感心せざるを得ない。
昨日、車からちょっと村野と小谷、それにオッサンを見かけただけで、知り合いに見晴らせるとか、普通なら考えもつかないだろう。
しかし考えてみれば、警察というのは何か事件が起こってからじゃないと動かないし、残っている証拠から科学的に証明してから容疑者を割り出していくことしかできない。
だからストーカーの被害届を出していたにも関わらず、襲われるとかいうことになるのだ。
千雪の場合、これだけの錚々たる顔ぶれのセレブが集ることと昨日の三人のようすから、もしかしたらと考えて予防線を張ったからこそ、窃盗犯を捕まえることができたのだ。
でも窃盗犯捕まえたって、いったいどういう知り合い?
良太は首を傾げた。
よほどの手練れがいるってことだろうか。
良太はそんなことを考えながら、小谷を探した。
あ、いた。
小谷はちょうど工藤や藤田、理香、それに紫紀ともう一人品のいい初老の紳士の近くにいた。
小谷が彼らから離れたところを見計らって、良太は声をかけた。
「小谷さん?」
「はい。何か御用でしょうか?」
小谷はにっこりと営業スマイルを向けた。
「忙しいところゴメン、実は京助さんから頼まれて」
「え、京助さんに?」
途端に、嬉し気な態度に変わった。
「小谷さんを連れてきてほしいって。ちょっと一緒に来られるかな?」
良太も、いつぞや演技で悩んでいた本谷に、そのまま普通でやればいい、などと偉そうなアドバイスをしたことを思い出しながら、極力自然な笑顔を作った。
俺だって一度くらいはドラマに出たことがあるんだからさ。
「はい!」
満面な笑顔で小谷が返事をした。
騙しているのがちょっと申し訳ないが、仕方がない。
良太は小谷に不自然に思われないよう、目いっぱい笑顔を向けていたので、その様子を工藤が見ていたのに気づかなかった。
何だ、あいつは。
あんな女にデレデレしやがって。
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