「お金に決まってるじゃない! いい服着ていいもの食べて、いい暮らししてるあんたたちなんかにわかんないわよ!」
ちょっと見可愛いと思われるだろう顔がゆがんだ。
良太までをも小谷は睨み付ける。
「いや、俺の服はただこのパーティのために社長に買わせられただけなんだけど……」
ずれた良太の発言に、場がしらっとなり、小谷は勢いを損ねた。
「わからないよ! 金がないからって人の物盗むとか! 俺だってこんな高そうな服とか持ってないけどな!」
声高に怒鳴りつけたのは公一だ。
公一としては直接自分の友人ではないにせよ、自分が彼らを請け負って京助に紹介した二人が、窃盗目的だったということがたまらなく悔しかった。
「え、だからこれは社長が………」
良太はまたブツブツと口にする。
その時千雪の携帯が鳴った。
「わかった。裏門から駐車場に車を入れてくれ。そこに田口て、ひょろっとしたやつおるから頼むわ。ほんでちょっと待っとってほしんやけど」
千雪は携帯を切ると、「車戻ったて」と京助に告げた。
「んじゃ、行くか」
京助は村野を立ち上がらせると、戸口へ促した。
「良太、公一、小谷連れて来い」
すると公一は小谷の腕を掴んで立たせた。
「痛い!」
小谷が喚いた。
「いいから歩いて」
公一の声はトーンダウンしていたがきつかった。
良太は公一の後ろからついて行った。
京助は駐車場まで二人を歩かせると、良太は暗がりに男が二人ほど立っているのを見た。
京助が村野をその二人の方へ突き出すと、二人は村野の両側から腕を掴んだまま、裏門から外に出て行った。
「公一、SUV、こっちにまわしてくれ」
京助はポケットのキーを放り、小谷の腕を掴んだ。
その場所からはライトに照らされた駐車場が見えた。
良太が見ている前で、田口が車をざっと点検すると、さきほどから待たせていた車の持ち主を呼びに行き、やがて夫妻が出てきて、田口がしきりと頭を下げていた。
助手席に夫人が乗り込むと、不快そうな顔のまま男性客はエンジンをかけ、表門の方へと走り去った。
公一が運転する車が京助らの前で停まると、京助は小谷を後部座席に押し込み、自分も乗り込んだ。
「良太、千雪のところへ戻れ」
おそらく京助らは窃盗を働いた連中を警察へ連れて行くのだろうと思われた。
SUVが出て行くと、裏門が閉まった。
良太はそれを見届けると談話室に戻った。
談話室では千雪が電話をしていた。
「ああ、おおきに、お疲れ」
千雪の電話が終わると、良太は言った。
「京助さんら車で村野と小谷連れて裏門から出て行きましたけど」
「ああ、悪いな、お客さんに手ったわせて」
千雪は苦笑した。
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