「わ、フレンチトーストだ!」
ダイニングテーブルに並んだオニオンスープやトマトやキュウリ、アボカドなどのサラダ、ベーコンとスクランブルエッグ、野菜ジュースという文句なしの朝食を見た途端、良太は腹が減った気がした。
ふわふわのフレンチトーストにバターとベリーのジャムを乗せて食べると、口の中でじわっと溶けていく。
「うんまーい!」
賑やかにパクパクと食べる良太を微笑ましくみながら、杉田さんはコーヒーをいれる。
「良太ちゃんのおうちはきっと楽しい食卓だったのね。お母様も作り甲斐があったでしょ」
杉田さんに言われて、良太はハハハと照れ笑いする。
「まあ、そう、楽しいっつうか、俺がガツガツするから、母とかにいつも落ち着いて食べろって怒られてました」
「あらまあ」
杉田さんはまた笑う。
工藤はその向かいで、何もつけないフレンチトーストを一枚食べると、杉田さんがキッチンに行くタイミングで、あとの一枚を良太の皿に移動させるつもりでいたのだが、杉田さんはなかなか動かず、コーヒーを工藤の前に置いた。
「ぼっちゃんの方が良太ちゃんより大きいんですから、ちゃんと召し上がってくださいよ」
…………大きい。
コーヒーに伸ばした手が一瞬止まる。
また良太が笑いをかみ殺しているのがわかる。
七十過ぎの杉田さんからすれば、おむつをしていた高広ぼっちゃんのイメージを払拭することはできないのだろう。
佐々木さんが作ったフレンチトーストがやっぱり美味かったとやら、コツは何だとやら、良太と杉田さんが話しているのをチラッと見やり、工藤は仕方なく、二枚目のフレンチトーストを食べきってコーヒーで流し込む。
ったく、誰がこんな甘ったるいもんを朝っぱらから食うなんてことを考え付いたんだ。
どこにも持っていきようがない怒りを心の中でぶちまけて、工藤は新聞を手にした。
すると早速、地方版のページに車の窃盗犯が捕まった云々が記事になっていた。
綾小路の文字はどこにもなかったが、警察はアジアの窃盗団とつながりがあると見て容疑者から話を聞いていると出ていた。
今回捕まったのは四人で、盗まれた車は貸別荘の敷地内に五台ほど見つかり、ベンツやBMW、フェラーリなど高級車ばかりで、セレブが集るパーティなどに潜り込んで盗み出していたという。
フン、素人に犯罪者を捕まえさせて、警察は何をやってるんだ。
これだから警察なんざ信用できないんだ。
俺なんかをマークする人員を、もっと人の安全を守ることに尽力させろよ。
祖母や伯父がそうだからといって、俺の首を狙うとか、実にくだらない。
だが、工藤に何かしらの脅威が迫った時、陰で工藤をガードする役目を担っている男、波多野からは、思わぬ刺客が忍び寄っていることもあるから気を付けろとは言われている。
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