ハンスの言葉に嘘があるとは思えなかった。
だけど………。
「だけど……」
「だけど?」
ハンスが同じ言葉を繰り返す。
「じゃあ、アレクセイのことは? あんたが本当に愛していたのはアレクセイなんだろ? ずっと見ていたのは……忘れられるのか? そんなに愛したヤツのこと、そんなに簡単に忘れられるわけ?」
思わずケンは心に引っかかっていたことを吐き出してしまった。
「そんなことを考えていたのか?」
そういうとハンスはふっと笑う。
「アレクセイのこと妬いてくれてるのなら俺は却ってうれしいけど」
カッと頭や顔が熱くなったケンに、ソファに膝をついてハンスはにじり寄った。
「華やかなあいつが羨ましいとか、あいつと比べるとか、そんなこと考えてるわけじゃないじゃない、俺はただ人間の思いなんかどうこうすることなんかできないって……」
「その通りさ、だから言っただろう、超高速でケンにいかれてしまったんだ、アレクセイとか誰とか、もうそんな次元じゃないんだ」
そう言ったかと思うと、ハンスはケンをソファに押し倒していた。
「え…ハンス……!」
少し抵抗したものの、狂おしいような口づけにケンは次第に思考力も力も奪われた。
だが、そのうちハンスの手がケンのセーターの中に入り込み、ズボンのベルトにもう片方の手がかかった時、ケンは「ダメ!……ちょ、ハンス、ここじゃ………」と必死に声を上げた。
ハンスがようやく手を止めたのは、すぐ近くでウウウという唸り声を耳にしたからだ。
ジョーが今にも飛び掛かりそうな顔でハンスを見ている。
「ジョー! いい子だ。遊んでただけだから、な」
ケンは起き上り、ジョーを引き寄せて撫でた。
「いい子だ、ジョー」
「恋敵はジョーだったのか」
ハンスはやれやれと苦笑した。
「だからここじゃダメだって……」
「秋に泊まった部屋ならいいんだな?」
ケンは顔を赤らめた。
とっくに身体の奥に灯された火が燻っている。
「おいで」
ハンスはケンの手を掴み、リビングを出てすぐの階段を上がる。
ケンはついて来ようとするジョーを振り返った。
「ジョー、いい子だ。おやすみ」
ジョーはわかったようで、足をとめた。
部屋に入ってドアを閉めたと思うや、ハンスはケンを抱き寄せてキスした。
そのままケンのセーターを脱がせるとうなじと言わず胸と言わずキスを浴びせながらドアに押し付け、ズボンのベルトをはずしてジッパーを降ろしてしまう。
「え……待って、ハンス……」
暖房の入っていない部屋なのに、一瞬冷たい空気がケンに纏わりついたものの、熱を帯びた身体はハンスによってさらに炙られる。
「あっ、や……! そ…」
昂ぶりをハンスの唇に含まれると、抗いがたい激流が身体の中を駆け巡り。
「や……あ………!」
いともたやすく追い上げられてケンは膝ががくがく震えた。
脱力したケンはゆらゆらとベッドに運ばれ、ぼんやりした頭でキスを浴びせられる。
そのうち後ろにひやりとした液体が流れるのを感じて、ケンは目を開けた。
「下心ありありで来たから、ちゃんと必需品は持参してるけど……、今夜はちょっと自制できない……ごめん」
いきなりねじ込まれた圧迫感にケンは息を呑む。
「あっ……あ……はっ……!」
中でハンスが動くたびに、ケンは言葉にもならない声をあげる。
やがて覚えのある愉悦の波に揺すられながら、ケンは意識を飛ばした。
気がついた時には、ハンスに抱かれたままバスタブの湯の中だった。
「……ハンス……」
「……悪い……無茶やった……もうずっとケンに触れることができなかったから制御不能になっちまって。いや、ちょっと寒かったから手っ取り早く湯を張った」
言いながらハンスはケンの髪にキスを落とす。
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