春雷9

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 秋山に関する佐藤といえば、確か、スキー合宿の時ゲレンデで出会った、秋山のクラスメイトだと言っていた女性が佐藤だった。
「あの人じゃないかと思って。ほら、スキーで会ったじゃない? 秋山さんのクラスメイトとかって」
 全く聞いていないように見えていたアスカだが、しっかり覚えているらしい。
「だって、佐藤なんて、全国苗字ランキング一位ってくらい、掃いて捨てる程いますよ?」
 その時、良太がふと思ったのは、アスカが、秋山のクラスメイトの佐藤さんのことを何故気にしているのかだった。
「スキー合宿からの流れで秋山さんに佐藤さんっていえば、あの人しか考えられないわよ」
「仮に、そうだったとして、秋山さんの何が変なんです?」
 良太はじっとアスカを見つめた。
「それは、あれよ、高校のクラスメイトに久しぶりに会って、何度か電話してるっていえば、わかるでしょ?」
「焼けぼっくいに火、みたいな?」
 亜弓が口を挟んだ。
「それよ」
 そういうとアスカは眉を顰めて、グラスのワインを一気に飲み干した。
「秋山さんが電話してたのが、あの時の佐藤さんて女性ってこと?」
 良太は改めて聞いた。
「そう。それもちょくちょく」
 アスカは頷いて、また自分のグラスにワインを注ぐ。
「でも、確かめたわけじゃないんでしょ?」
 そう聞いてから良太は、もしそれが事実として亜弓の言うように、焼けぼっくいに火みたいなことになっていたとしても、だからといってアスカがどうしてワインをがぶ飲みしているんだ、という疑問にぶちあたる。
「あたしはさ、秋山さん、てっきり宇都宮さんラブだと思ってたから」
「は?」
「え?」
 耳を疑って良太だけでなく亜弓までがアスカを凝視した。
「だって、秋山さん、宇都宮さんが良太に告った時さ、宇都宮さんのこと、素でもカッコいいって言ってたんだよ?」
 この発言に反応したのは亜弓だ。
「それ、どういうことですか?」
 何故、アスカとそれに秋山がそんなことを知っているのかと良太も仰天した。
「良太が宇都宮さん振ったとこに、たまたま、出くわしたんだって。秋山さん」
 アスカは秋山のことを一応弁明したつもりのようだが、良太としてはまさかこんなところで亜弓に知られるとは思いもよらなかった。
「ちょっと! お兄ちゃん! ほんとなの? 宇都宮さんに告られた? しかもそれを振った?」
 亜弓が良太の腕を掴んで、キリキリと問い詰める。
「アスカさん、そういうプライベートなことをあんまり口にしちゃだめでしょ」
 非常に気まずい思いの良太だが、亜弓に答えるよりとりあえずアスカを窘めた。
「ひどい! お兄ちゃんが宇都宮さんに告られてたなんて! 宇都宮さんってそういう人だっけ?」
「宇都宮さんはどっちもOKな人みたい」
 良太の代わりにアスカが亜弓にそう答える。
 良太はため息をついた。
「ってか、宇都宮さんじゃなくて、秋山さんのことよ!」
 またグラスをゴクゴク飲みほすと、アスカは良太に向き直る。
「あ、ああ、でも佐藤さんのこととか、秋山さんに聞いてみないとわからないでしょうが」
「だから、良太、聞いてみてよ。それとなく」
 それが言いたかったのか、と良太はようやく納得する。
「え、俺がですか? うーん、まあ、じゃあなんとか聞いてみますけど」
 それとなく、というのが良太は苦手だし、それに、アスカに何故それが知りたいかとは今聞けそうにない気がした。

 


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