逢いたい11

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 良太の中では、工藤の機嫌がこれ以上悪くならないうちに切り上げたい話題なのだが。
「こいつに役者なんか無理ですよ」
 案の定工藤の口調が尖ってきたのを良太はヒシヒシと感じる。
「ほう? 何だか天下のプロデューサー工藤高広の台詞とは思えないな」
 口元には笑みを浮かべながら尚も探るような眼で、坂口は工藤を見つめる。
 坂口の言わんとしていることは、工藤にも伝わった。
 人を見る目に長けている坂口のいいセンいっていたは、そうそう耳にできる言葉ではない。
 これまでもその眼力でダイヤモンドの原石を何人も見つけてはブレイクさせてきた。
 下手くそでも何か持っている、良太のそんなところがたかだかピンチヒッターのチョイ役でしかなかったのに騒がれた所以なのだ。
 実際工藤も、その時まで良太にそんな資質があろうなどとは思いもよらなかったのだが。
 もしあれが良太という存在でなければ、工藤にしても秘書やプロデュースなんかの仕事を押しつけたりする前に、とっくに役者として売り出していたはずだ。
「まだとても社長の足元にも及ばないんですが、俺、プロデュースの仕事していきたいと思ってるので」
 とりあえず、もうこの辺にしてほしいと、良太はきっぱりと言い切った。
「そうか、君の意志なら仕方ないな、いい役者になると思ったんだがな」
 まだ言ってるよ、と頭の中で愚痴りながら良太はついグラスを空けてしまう。
 それを見た坂口がたったかおかわりを注文し、良太は苦笑いでそれを押し頂いた。
「そういや君の方のスケジュールは大丈夫なのか?」
「今さらですよ、坂口さん」
 工藤は渋い顔を崩すことなく言い返した。
 コクリとグラスを傾けた時、良太は坂口と宇都宮の会話が少し遠ざかった気がした。
 何時頃だろ、このホテルに着いたのが確か十時前だったから、そろそろ十一時ってとこかな。
 もともと余裕をもって日程を組んでいたから、飛行機は昼過ぎの便だ。
 今夜はホテルでゆっくりしようなんて思っていたのだが、どうやら部屋に戻って寝るだけになりそうだ。
 良太はそんなことを考えながら、自分では気づかずにコックリし始めていた。
 工藤が思わず眉を顰めたのは、良太が隣に座っている宇都宮の肩に少し凭れるようにして船を漕ぎ出したからだ。
「申し訳ない、おい、良太」
 コの字になったソファの向こう側に良太と宇都宮が座り、こちら側に坂口と工藤が陣取っている。
「構いませんよ、俺らが振り回したから疲れてるんじゃないですか」
 宇都宮は気にもせず、良太に肩を貸したままグラスを傾ける。
「ちょっと失礼」
 限界は工藤の方だった。
 こっちは構うんだよ。
 イラつきながら工藤はバーのチェックを済ませると、電話を借りてフロントに部屋を聞いた。
 エグゼクティブツインなら空いているという。
 このクラスのホテルなら、良太にゆっくりさせてやれるだろう。
 そのままフロントに降りてチェックインした工藤はバーに戻る。
「早朝から撮影だったので申し訳ありません、そろそろ引き揚げさせていただきます。お二人はゆっくりして行ってください」
 工藤は良太を揺り起したが、「はい、大丈夫です」と口にするばかりで、足元はおぼつかない。

 


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