「また連絡してくれ」
「お疲れ様です」
「ではよろしく」
工藤は坂口と宇都宮に素っ気なく返すと、良太を肩に抱えながら出口へと向かう。
コートと良太の預けた土産物の袋を手にバーを出て、工藤は良太をエレベーターに乗せたが、酔いと疲れで頭は眠っているらしい。
部屋に入り、ベッドに下ろしても良太は正体もなく寝入っていた。
撮影もあるが、坂口や宇都宮を相手に気疲れだろうと思いながら、上着とズボンを脱がせ、ネクタイを取ってやった工藤は、少し口を開いた子供のような寝顔を見ると苦笑いする。
だがこんな体たらくで、もしあの場に自分がいなければ今頃連れ込まれていたのは宇都宮の部屋だったのではあるまいかと、またぞろくだらないシーンを思い描いた工藤は、舌打ちして、シーツをまくり良太を中に収めてからバスルームに向かった。
さっきから一定のリズムで鳴り響く音が心地よい眠りを妨害していた。
この音は何だと寝返りを打ったところで、今度はドアが開いた音で良太はがばっと身体を起こした。
いったいここはどこだと辺りをぼんやりと見回しながら、聞こえてきた英語の怒鳴り声は記憶にあった。
バスローブの背の高い男が携帯でしゃべっているのを見ると同時に、夢の中でトイレを探していたのを思い出し、良太はベッドを飛び下りる。
窓辺のソファセットの傍で工藤が振り返ったのを横目に、良太はバスルームに飛び込んだ。
うっわー、いつここに来たんだ? ぜんっぜん覚えてないし。俺、眠り込んでた? うっわー、俺、何か失態やらかしてないよな?
用を足して鏡を覗き込んだ良太は、じわじわとクリアになる頭の中で喚く。
バスルームから出てくると、工藤がちょうど電話を終えたところだった。
「あ、すみません、俺、ひょっとしてバーで寝ちゃったんですね」
良太はベッドに戻ろうとしてズボンや上着がないことに気づく。
「えと、俺の服?」
「クローゼットだ。お前、今頃服着てどうするんだ?」
工藤はクローゼットから服を取り出す良太に怪訝な顔を向ける。
「だって、部屋取ってあるんですよ、荷物も置いてきたままだし」
「お前はバカか。荷物なんか明日帰る前に寄ればいいだろうが」
思い切りバカ呼ばわりされて、良太はムッとする。
「だって俺、今夜はゆっくり風呂につかって寝ようかと……」
「風呂にゆっくりつかればいいだろ。明日は昼過ぎの便を取っておいたから、朝もゆっくりできるぞ」
「え? でも俺、もう飛行機チケット取ってあるし」
「お前はバカか」
また呆れた顔をされて、良太は「何だよ、勝手に……」とブツブツ言いながらも、とりあえずズボンを履いてコートを取り出した。
「だからどこへ行くんだ?」
「コンビニ。着替えも持ってきてないし……」
良太は携帯を取り出すとホテルの近くのコンビニを探しながらドアに向かう。
「外は吹雪いてるぞ」
「酔い、醒ましてきます」
どうやらホテルからワンブロック先にコンビニがあるようだ。
「ちぇ、飛行機キャンセルしなきゃ……」
工藤の前では文句を並べ立てても無駄という感じだし、それに眠ってしまったのは良太で文句を言えた義理ではないのはわかっている。
「うっわ、さっむー!」
外に出ると吹雪はおさまっていたが、降りしきる雪に思わず首を竦めながら良太はコンビニに向かった。
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