逢いたい8

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「そうかぁ? 彼女の方は満更でもないみたいじゃないか? ドラマ、お前のプロデュースだろうが」
 なおも坂口は引き下がらない。
「別の仕事で手いっぱいなんで、広瀬に任せてます」
 任せてって丸投げの間違いだろ。
 工藤のセリフを耳にして、良太が心の中で突っ込みを入れた時、ポケットで携帯が鳴った。
「ちょっと失礼します」
 良太は廊下に出て襖を閉めた。
 案の定、たった今話題に上がっていた丸投げの仕事で、スキーに行っている頭痛の種その二らしく情景に深みを出したい云々と並べ立てているが、それによって登場人物の出番が変更され、後のシーンにも変更せざるを得ない状況が予測されるだけで、全体から見て情景がさほど影響されるものではない。
 どちらかというと監督のやり方にケチをつけたいだけの提案でしかないだろう。
 良太はついつい大きく息を吐いた。
「何だって井上と川西を組ませたんだ? やつらハブとマングースってな噂だろう」
 部屋の中では坂口が工藤にそう切り出した。
「俺が組ませたわけじゃない。スポンサーにそれぞれ取り入ってて、蓋を開けてみたらハブだかマングースだかの顔を互いに拝むことになっただけで。俺も蓋を開けるまで山之辺のことも何も知らされてなかった。スポンサーに踊らされたんですよ」
「だから広瀬くんに全部押しつけたってぇのか? 曲者の井上や川西、坊や一人であしらいきれるのか?」
「手におえなければ何か言ってくるでしょう」
 井上に川西だけではない、面倒なのは山之辺が絡んでいることだ。
 坂口と仏頂面の工藤がそんなやり取りをしているところへ、良太が戻ってきた。
「何だ、また奴ら何か言ってきたのか?」
「あ、ええ、まあ。何とか納得していただきましたけど」
 工藤の問いかけに、坂口の前なので良太はあたりさわりない答えを返したが、坂口と工藤はかなり重要なことも共有している間柄のようだと良太は二人のようすから感じていた。
「ほう、工藤の出る幕もないってか? 頼もしいな」
「とんでもない、俺になら言いやすいってだけでしょう」
 良太は座りしな坂口に答えながら、工藤の横顔をチラリと見やる。
「それで、具体的にどこまで進んでるんです? キャスティングは考えているんですか?」
 工藤は尋ねた。
「まあ、MBCの佐橋には話は通してあるんだが……キャスティングはこれからだな。とにかく宇都宮くんの承諾を得ないことにはとね」
「承諾っていうか、拒否権なしってやつでしょ?」
 口を挟んだ宇都宮が笑う。
「いやスケジュールを確認しないとさ。で、君はヒロインは誰がいい?」
「え、俺に振るんですか? わかりませんよ、ヒロインって女子高生?」
「さすがに女子高生もできるだろうって子、希望はないのか? 絡み相手の」
 冗談ともつかぬ口調で坂口は笑う。
「見当もつかないですよ」
「まあいい、何人か候補をあげとくから、君、ダメそうな相手教えてくれ。広瀬くんは心当たりない?」
 いきなり振られて良太は戸惑った。
「え………女子高生ってのは、今一つピンとこないし……竹を割ったような性格できつくて明るい奥さんってのなら」
「ほう、誰だ?」
 ついブツブツ口にした良太に、坂口がさらに踏み込んでくる。
「いえ、俺、そういう人、ひとみさんしか思い当たらなくて」
「ひとみ? ああ、山内ひとみか、なるほど、いいな、決まりだ」
「えっ? 決まりってあの」
「工藤、早速彼女のスケジュール都合つけといてくれ」
 おたおたしている良太の横では、坂口と工藤がたったか話を進めていく。
 いいのか? それで……

 


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