やがて終業のチャイムが鳴り、六時間目の英語が終わると、志央はぐんとのびをした。
「志央、生徒会室、行くか?」
教室を覗いて幸也が呼んだ。
「あ、俺、今日日直。日誌出してくるから先行っててくれ」
「わかった」
日誌を書き終え、担任に提出して職員室を出たところで、二年生に声をかけられた。
勝浩のクラスの生徒だと名乗り、桜庭から志央への手紙を預かっているという。
「桜庭から?!」
志央は引っ手繰るようにしてその手紙を広げた。
その頃、生徒会室で私物をまとめていた幸也の携帯が、軽やかに鳴った。
志央だと思って出ると、西本の声だ。
『桜庭から自殺をほのめかした電話がきました!』
「桜庭が自殺!?」
そこにいた七海、勝浩、そして松永が一斉に幸也を振り返る。
「腹いせに学園内で自殺するってか? たった今? わかった! 手分けして探そう! え……志央がつかまらないだと?! 何だよ、それ!」
怒鳴りつけて生徒会室を飛び出した幸也に、驚いた七海も続いた。
「え、出たって?」
志央の教室をもう一度覗いたが、残っていた生徒に尋ねたが、とっくに出て行ったという。
念のため職員室で志央の担任にも聞いてみるが、日誌は預かっているという。
嫌な空気が漂った。
「どうしたんですか?! 城島さんに何か?」
ばたばたと七海と幸也の後を追ってきた勝浩と松永が尋ねる。
「いない…消えた…」
「長谷川さん!!」
「あのヤロー!」
幸也は思い切り拳で壁を叩きつける。
「あいつはちっともわかっちゃいない! 強気でいるが人目を引くし、誰かついてないとどんなやばい目にあうかしれないってことを!」
「志央さんを狙ったやつに心当たりないんですか!?」
七海はこの際意地を張っているどころではなく幸也を問い詰める。
「ああ」
この際話さないわけには行かないだろうと、幸也は事情をかいつまんで話した。
「ここ一年ばかりの間に、かなり陰湿で暴力的なイジメが横行していた。俺たち、俺と志央と、大山、西本の四人でイジメグループの実態と、それを牛耳っている黒幕をつきとめようとしていたが、まだ誰かわかっていない。そいつに脅されて、部員を使って堺を襲ったのは桜庭だ」
七海は幸也が話し終わる前に生徒会室を飛び出していた。
「手分けして桜庭と志央を探すしかない。西本と大山も動いている」
「俺たち、本校舎捜します!」
勝浩と松永も走り出した。
「騒ぐなよ! 桜庭を刺激するとやばい。あと、お前ら二人一緒に動け!」
「はい」
幸也は勝浩と松永に指示してすぐ、大山と西本を携帯で呼び出し、志央が消えた旨も伝えると、自分は西棟に向かいながら、屋上まで駆け上がる。
だが人の気配がないのを見届けると、階段をまた走り降りた。
東棟を駆け回っていた七海は、桜庭を探しながら、幾度か志央の携帯に連絡を入れるが、どれだけコールしても出ない。
胸騒ぎが走る。
どこだ? どこにいるんだ? 志央さん、返事してくれ!
祈るような思いで必死に心の中で志央を呼ぶ。
『山に入っちまったら、俺たちだけじゃ手におえない』
裏庭から裏山への入り口を探している大山と西本から幸也に連絡が入る。
「わかった。とりあえず、学内、探せ」
幸也は極力冷静にと自分を抑えつつ、携帯で指示した。
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