ボロボロボロ、と志央の目から熱いものが溢れ出て落ちた。
「俺なんか、見るのも嫌なんだろ?」
もう一度、あの笑顔を取り戻せたらよかったのに。
「行けよ! 行っちまえ! バカやろ…」
顔を涙でぐしゃぐしゃにして、志央は精一杯の虚勢を張る。
すっと、そんな志央の頬に、のばされた七海の指が触れる。
「行くな、って言いたいんでしょ?」
志央は涙で潤んだ目を上げる。
「何でそんなこと…俺がっ…!」
七海はクスリと笑う。
「何で笑うんだっ!」
むっとして志央は突っかかる。
「またまたやせ我慢しちゃって」
「……何だと?」
「俺を必死で呼んだくせに」
志央の頬がかあっと火照る。
「あれは……咄嗟に…」
「俺を呼んだんでしょう? 俺があげたストラップも捨てられなかったくせに」
七海は腕を伸ばす。
志央は逆に後ずさる。
「あれは…せっかく、妹さんが作ってくれたって言うから…」
「志央さん、素直じゃないんだ」
また一歩七海が前に出る。
「俺のこと好きなんでしょ?」
「だから………俺は幸也と賭けをして…」
「ミイラ取りがミイラになった?」
七海は茶化す。
「バッカやろ! 生意気ぬかすな!」
「フ…、そうですね。俺はあなたにとって、賭けのコマでしかなかったんでした。じゃあ、これでほんとにお別れです。ご要望どおり、行っちまいますよ」
再び七海が背を向け、ドアノブに手をかけた時、体が勝手に動いて、志央はガクランの裾を掴んでいた。
「…行くな! バカ」
「引き止めたら、俺、何するかわかりませんよ。いいんですか?」
「…いい…から…」
振り返りざま、抱きすくめられ、激しいキスが志央を襲う。
「俺の志央さんに触りやがった高橋のヤロー、ぶち殺してやればよかった!」
「七海…」
志央には拒む理由がもうなかった。
眼が眩むほどの甘美なキスを十二分に志央にくれたあと、ダメだ、と七海が呟く。
「何が?」
問い返す志央を見つめ、七海はどうにもしようがないという情けない顔で首を横に振った。
次には志央の腕を掴んだまま、七海は寝室のベッドに直行する。
「おい、七海!」
志央をベッドに投げ出し、七海はガクランを脱ぎ捨ててすぐさま覆い被さってくる。
「おい、こら、ちょ…待て」
「今度こそ待てません」
志央は腕を七海の胸に突っ張る。
「それじゃ、高橋と同じじゃないかっ」
「あたりまえ、犯ったもの勝ちです」
「何で俺が犯られる方なんだ?」
往生際も悪く、志央は因縁をつける。
「そりゃ…、志央さんなら、誰でも犯りたくなるから」
にんまりする七海。
「ザけたことをぬかすな!」
「何するかわからないって言ったはずですよ」
バシバシと、七海の背中を叩いて抗議するが、ケダモノと化している七海はもはや聞く耳を持たない。
「男を挑発すると、どうなるか、よくわかったでしょ」
「俺も男だっ…」
バスローブ一枚なんて、こいつの前では据え膳状態だった。
だけどまあ、こうして七海の腕にいるのが異様に心地よいと思ってしまったのだから、仕方ない。
「ああ…っ…ウソッ…七海っ…」
そんなことを考える余裕があったのは最初だけだった。
自分でも信じられないような甘ったるい喘ぎが口を吐く。
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