卒業3(ラスト)

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「力、帰るの? 成瀬も?」
 啓太が不思議そうに見上げる。
「こいつの合格祝いやるんだよ」
 ぶっきらぼうに力が言った。
「何だよ、ここでみんなでやればいいじゃん」
 東山の言うことはもっともだった。
「うっせえな、二人だけでやるんだよ!」
「…力っ!」
 思い切りぶちまけている力を佑人は睨んだが、放った言葉はもう消えないだろう。
「行くぞ、佑人!」
 一見、ガキ大将とそれに従う子分といった雰囲気で二人が退場してややあった。
 観客席は何となく不思議な違和感に固まっていたが、やっと我に返ったのは坂本だった。
「ここで言うか、力のやつ。ま、そんなわけでやつらのことはほっといて、俺の合格祝いやろうぜ。今年はさ、卒業式の前に発表あったから、ほんとすっきりして卒業できるよな」
「え? ………えええええっ????」
 ようやく何かを理解したらしいのは東山だ。
「どしたん? 東山」
 こちらはまだよくわかっていない啓太だ。
「何、やっぱ、そうだったんだ」
 ポツリと甲本がつぶやいた。
「あん時、バレンタインの日、力のヤツ、女ふっといて、成瀬の手ぇ握って出てったからさ、どういうことだろうとはちっと謎だったんだ、なるほどようやくガテンがいったぜ」
 甲本は一人納得している。
「練さん、コーヒーお変わり!」
 何がわかったんだよ、とまだきょとんとしている啓太の前で、坂本が声を張り上げた。

 

 何を口走ったのだろう、佑人はそれすら覚えていない。
 力の部屋に入って二人きりになった途端、ほとんどものも言わずにキスした。
 会いたかった。
 卒業式まで会わないと今度は佑人が言ったくせに。
 発表が昨日で今日が卒業式だったから、その上、答辞まで引き受けることになってしまったから、落ちていたらちょっと格好よくないかな、とか思いつつ、今日を待っていた。
 暴走する力についていくのに精いっぱいの佑人だったが、それでも多分、力と同じくらい力のことが欲しかった。
 服を脱ぐのももどかしいくらいに。
「卒業式のあとで、家族団欒みたいなパーティのあとで、みんなのこと放り出して、こういうのってどうなんだろ……」
 声が少し掠れてしまった。
「どうでもいいって、んなの」
 ベッドの中で力は佑人を抱き寄せたまま、髪や肩を今度はやさしくと愛撫する。
「それより」
 肝心なことを忘れていたと、佑人は頭を上げた。
「あんなことみんなに言っていいのか?」
「もう卒業したんだぜ。ちゃんと宣言しとかねぇと」
 何だかやっぱり、こいつにはかなわない。
 佑人は心の中で呟く。
「百合江にもきっちり言ってあるから。お前は俺のだって!」
「え? 待てよ、それって……」
 待てと言ってももう遅いことは明白だった。
 ということはパーティの時、既に知れていたってことか。
「宗田のヤローにも言っとかねぇと」
 力がブツブツ口の中で言ったが、百合江と話した時は全然前と同じ対応だったけど、などとちょっと考え込んでしまった佑人には聞こえなかった。
 

 以前は高校なんか早く卒業してしまいたいと思っていた。
 でも力や坂本や東山や啓太や、今は佑人にとって大切な存在がいる。
 卒業してもきっとそれは変わらないだろう。
「合宿で一緒に免許とるぞ。申し込んどいたからな」
「え、いつ? そんな話聞いてないぞ」
「だから今言っただろ」
 これからも力のビックリ箱にはきっと驚かされそうだけど。
 力といると遠い空にさえ、佑人にも手を伸ばせば届くような気がしてくる。
 伸ばしてみなきゃわからないだろうと。
 うん、そうだ、伸ばしてみよう。

 


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