好きなのに 15

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夕べはベッドに入った頃に、沢村から電話が入った。
声が聞きたかったなどと言うので、うるさい、早く寝ろ、と切ってしまったのだが。
「いや、俺も無頓着過ぎやった。キャンプが宮崎やなんて知らんかったし、しかも昨日からやなんて。キャンプが終わるまではもう会わん」
「え、それ、沢村さん可哀相だよ。だってきっとちょっとでも佐々木ちゃんに会えると思うから頑張れるんだから」
「ええ……?」
 直子に言われて、沢村ははたと重大な問題に気づく。
 プロの選手であれば、否が応でも成績というものですぐに人目に晒されるのだ。
 自分のせいで沢村の成績が落ちたりしたら………。
「佐々木ちゃん、逆だよ逆!」
 何やら考え込んでいる佐々木をじっと見つめて直子が言った。
「え? 逆って?」
「だーかーら、沢村っちが無茶なことして佐々木ちゃんのせいで成績が落ちたらとか今、考えたでしょ? それが逆! 大体選手なんて、好きな子のために頑張ろうって120%の力を発揮すんのよ!」
 佐々木の心を見透かして先回りしたように、直子はビシッと断言する。
「たまーに彼女とラブラブで成績ガタ落ち、なんてヤツもいないわけじゃないけど、そういうのって大概自分のことしか考えないバカ女に引っ掛かった人を見る目のないヤツのこと」


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