着いてみれば、ここがフランスのパリなんだ、と感慨を深める余裕もないまま、安ホテルにチェックインし、その夜はルーブルのチェックをして食べて寝るだけだった。
翌朝早く、悠は高津に叩き起こされ、時間がないからとあたふたとルーブルに向かう。
確かに藤堂の言うとおり、一つ一つ見ていったらルーブルを制覇するのにどれだけかかるかわからない。
これだけしか見ない、と決めて向かった悠だが、いざ来てみると、あちこちでついつい立ち止まりたくなるものばかりで、時間がない高津に手を引っぱられて走り回るはめになった。
次の日のロダン美術館では、カミーユ・クローデルの作品に抱きつかんばかりの高津を閉館過ぎて連れ出すのに悠は一苦労だった。
「ああ、俺のカミーユがあああああ!!!!!」
悠よりガタイの大きな高津が踏ん張る。
「わかったから、また今度にしろ」
悠はとにかくその腕を掴む。
「今度っていつだよ! あああ、いっそのことパリに住もうかな」
「住めよ!」
やっとのことで高津を美術館から引っ張り出し、その夜はパリに留学中の先輩の部屋で宴会となった。
「いやあ、いいとこ住んでますね~、さすがぁ」
高津が広い部屋をうらやまし気に見回した。
「恵まれてるからな、俺は」
さらりと口にするオヤジづらは大野という。
二人の三年先輩にあたり、裕福な家に育った大野は留学費用も親が出してくれているという。
借りているアパルトマンも画学生にしては贅沢なものだ。
「いいなぁ、俺もパリに留学してぇ!」
「しろよ。お前らの力なら、費用だしてくれるっつう誰か、いそうじゃん。卒制展で大賞とったんだろ? 高津。悠は優秀賞で。まあ、お前の場合、飯倉とやりあってたから優秀賞にとどまったらしいってとこだろうし。俺はさ、お前らみてぇ才能ねぇから、親掛かりだけどよ」
喚く高津に笑い、大野はそんなことを言う。
「まあ悠にはいるけど、俺の作品をわかってくれる人がいまいちいなくて」
高津はボソボソと口にした。
「俺にはいるってどういうことだよ?!」
酔った高津が言ったことに、悠は食って掛かる。
「いるじゃねーか。だいたい、せっかく絵を買ってくれたってのに、何で、代金受けとらねんだよ!」
酔っているから、べらべらと高津はしゃべる。
「なんでまた、もったいない。お前、もらえる時にはもらっておけよ。俺らの商売、いつもらえる時がくるかなんてわからないんだぞ」
大野の言葉は実感がこもっている。
「だってあれは……」
金持ちの思いつきでしかない。
悠は藤堂の顔を思い浮かべる。
そんな風にしか思えないのは、自分がひとり立ちできていないせいだ。
もし、悠が河崎なんかに口をはさませないくらいちゃんとしてたら、代金ももらうことができたかもしれないが。
「第一、お前、親父さんに一言言えばだな~」
「え、悠、親父さんいたのか?」
高津の一言に、大野が反応する。
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