花びらながれ17

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 オフィスに戻るとソファに来客がいて、その男はドアが開いたのを振り返った。
「どうもすみません、お忙しい時に、広瀬さん」
 立ち上がった大柄な男はちょっと頭を下げた。
「え、渋谷さん、………どうも」
 警視庁捜査一課の渋谷である。
 工藤とは昔から何かと因縁があるようだが……。
 鈴木さんはソファセットに二人分のお茶を置くと、「じゃ、お昼に行って参ります」と気を利かせてオフィスを出て行った。
 良太はコートをデスクの後ろのハンガーに引っ掛けると、とりあえず工藤と渋谷が難しい顔をしているようすに、有吉のことしかないだろうと思いつつ、二人のところへ歩み寄る。
「あの……」
「知っていることを話せ」
 いつものことながら頭ごなしな工藤の言葉に、良太はムカついた。
「何をですか」
「有吉のことだ。はめられたというその根拠は? 何を隠している」
「上は有吉さんを容疑者と断定して、本人は否認していてもこのままでは起訴される可能性があります。煙草の吸殻は有吉さんのDNAと一致しているし、目撃証言では確かに有吉さんだと」
 工藤の言い方はどうあれ、渋谷の発言は厳しさを物語っていた。
「有吉さんは犯人じゃありません。渋谷に呼び出されて十分ほどで部屋に戻ったのは事実です」
「部屋に戻った? 有吉は渋谷を一時間ほどうろついていたと言ってるけど?」
 渋谷に問われて、良太は言葉に詰まる。
「本当は部屋に戻ったはずです。吸殻がそこにあったのは絶対、はめられたんだ」
 市川に誰にも話さないと約束したからには、自分の口から話すわけにはいかない。
 しかし、この状況では有吉には不利になるばかりだ。
「有吉と市川のことは調べがついてる。いいからとっとと話せ」
 えっ、と良太は工藤を振り返った。
「市川というのは?」
 渋谷が工藤に尋ねた。
「少しだけ、時間を下さい」
 良太は工藤が何か言う前にそう言うと、自分の席に戻った。
「あ、悪い、今いい?」
 つかまるだろうか、と思いながら携帯で呼び出した市川は、すぐにつかまった。
「有吉さん、このままだとすごく不利な状況らしい。やっぱり黙っていてはまずいと思う」
「わかった、すぐに警察に行って何もかも話します」
 市川はどうやら既にそう決意しているようすで、きっぱりと言った。
「だったら、先にうちのオフィスに来られないかな?」
 すぐに行く、と言って市川は携帯を切った。
 良太は渋谷たちのところに戻ると、「今、有吉さんのアリバイを証言してくれる人がこっちに向かっています」と言った。
「どういうことです?」
 渋谷が身を乗り出した。
「有吉さん、その人の立場を考えて黙ってろって言ったらしいんです。事件の夜、有吉さん、渋谷に呼び出されてから十分ほどで自宅に戻ったところへ、その人が訪ねて行ったらしくて。実はその人は、何か脅迫を受けていて」
「脅迫?」
 渋谷がまた強い口調で尋ねた。

 


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