花びらながれ19

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「え、あれ撮ったの、有吉さん?! どういうつもりであんな!」
 良太はカッとなって有吉に詰め寄った。
 いくら何でも市川をあんな形で世間に晒すなんて、と良太は憤る。
「さすが工藤さん、よくわかったな。あん時、写真撮ってる俺とあいつ目が合って、あとで怒鳴りつけてきたさ。良太ちゃんに迷惑だろうって」
「え………」
 じゃあ、市川はわかっていたのか、有吉がふざけて撮った写真を週刊誌に渡したことを。
 良太はそこまでされてもまだこの男が好きらしい市川がいじらしくてたまらない。
 ったく、何でこんな男を。
「そういや、あん時の写真……」
 有吉はふと、そんな言葉を口にして、しばし黙り込んだ。 
 その時、有吉の携帯が鳴った。
「え? なんだって? 確かに俺の部屋か?」
 俄かに気色ばんだ有吉の声に、良太も工藤も振り返る。
「何かあったのか?」
「俺の部屋が燃えてるって、大家から」
「何だと?」
 これには工藤も険しい顔を向ける。
 有吉は電話を切らずに立ち上がると、「悪い、ちょっと行くわ」とオフィスを飛び出していった。
「誰もいないはずの部屋から火が出るっておかしいですよね。有吉さん、さっき言ってましたよね? あん時の写真とか何とか、ひょっとして何か犯人の不利になるような証拠、写真に撮ってるんじゃないですか?」
 不安を隠せない声で良太は言った。
 工藤はすぐに携帯で渋谷を呼び出し、有吉の部屋が燃えているらしいがおそらく放火で、事件に関係があるかも知れないと告げた。
「市川さん、大丈夫かな……」
 有吉の部屋が犯人の放火なら、脅迫状を送られた市川にも何らかの危害が及ばないとも限らない。
 工藤は渋谷に連絡を入れた後、たまたま電話をかけてきた下柳に火事のことを告げると突拍子もない声を上げた。
「ああ、おそらく放火だろう。証拠隠滅を狙ったか。ああ? データ?」
 下柳はアフリカでのデータはまだ整理がついていないし、有吉が持っているはずだという。
「仕方ないな、万が一の時は振り出しだ。費用の心配はいい、とりあえずスケジュール調整しといてくれ」
 聞き耳を立てていた良太は愕然とする。
「そうか、アフリカでのデータ、ぱあになっちゃうかも」
 番組の大事なデータがダメになったりしたら、またアフリカへ赴いてデータを一から撮影しなくてはならないわけで、費用のことを考えて頭を抱えそうだし、工藤なら怒鳴り散らすかしそうものだが、こんな時、工藤はむしろ冷静なのだ。
 本人が何かやらかしたのではなければ、こき下ろすようなことはしない。
 ま、そういうとこはやっぱできる男っつうか。
「何だ?」
 ぼんやり見つめていた良太に電話を終えた工藤が顔を向けた。
「え、いえ、あの、今夜は接待でしたよね」
「ああ、フジタの会長だ」
 赤坂の料亭のあと銀座の会員制クラブへ向かう予定だ。


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