外に出るとびゅうびゅう刺すように冷たい風が吹きつけ、あっという間に体温をさげてしまう。
「うう、寒ぅ…………」
良太はマフラーで口元辺りまで覆った。
短いダウンジャケットではあまり防寒対策にならないくらいだ。
数センチ積もった雪は、影になっているところにはまだ消えないまま残っている。
そういえばこの冬はまだ風邪を引いていない。
インフルエンザも流行っているし、気をつけないとな。
弁当を買うべく近くのコンビニに寄った良太は、ドアを開けた途端、どーんと色とりどりのチョコのラッピングの山を見て、げっと思わず口にしそうになった。
バレンタインデー………
天井からはあちこちにチョコやプレゼントの購入を促すポップが踊る。
日本では、男がチョコをもらう日になって久しい。
最近では義理チョコなるものも変遷を遂げ、今やバレンタインギフトは多種多様だ。
思わず、はあ、と良太は溜息をついた。
ここ数年、鈴木さんを始め、会社所属俳優のアスカや奈々、独立した万里子や大物女優の山内ひとみもきっちりチョコやプレゼントをくれる。
もちろん妹の亜弓も何かしら送ってくるし、母親は得意のチョコレートブラウニーを焼いて温かい手編みのセーターやマフラーや帽子などを送ってくれる。
その他、業者さんや仕事関係者からの義理チョコやギフトが工藤だけでなく、良太にも届くようになった。
もちろん俳優の志村や小笠原宛のものは、宅配業者も破格の量を一度にどんと持ってくるため、そのまま上のリラクゼーションルームに一時保管することにしている。
良太でさえ去年はもらった分のお返しをするのに、ホワイトデーには四苦八苦した。
工藤の分も一緒にやらなくてはならないからだ。
だが、小笠原のマネージャー真中にすればこの時期の大変さは並大抵ではないようだ。
志村のマネージャー小杉は、とてもそんな時間はないので、そういう対応は妻や息子の手を借りてやらせている。
チョコレート会社は掻き入れ時なんだろうけど、全くお返しを考える身にもなってくれ、と言いたい。
おまけにこの日、藤堂からも大抵美味しいスイーツをもらうのだ。
藤堂が美味しいものを持ってきてくれるのは何もバレンタインとは限らずなので、奈々から藤堂へのチョコを預かったついでに、あまり深くは考えずに藤堂にチョコをあげたこともある。
だったら、工藤にも何かやればよかったかな、なんて。
もっとも、お互いに忙しくて、去年はバレンタインデーなんかあっという間に過ぎてしまったのだ。
だが、二月の終わりに工藤はスキー用具一式くれたし、三月の誕生日には今腕にはめている時計をもらったしなあ。
back next top Novels