「あの二人、何だか、天敵って感じなんだよな…」
春に、佐々木についてテレビ局を訪れた時のことだ。
別の仕事ではあったが、よりによって玄関ホールで河崎、三浦組と鉢合わせしたのだ。
「珍しく女の子、引き連れてないんやね、河崎さん」
「あいにく、お前らほど暇じゃないんでね」
「コースケ、行くで」と、佐々木はわざとらしく浩輔の肩に腕を回したりするので、振り向くと河崎が睨みつけていた。
デスクの上に携帯を置いたままにしておいた時に限って河崎からで、わかっていて佐々木が出たりする。
で、ひと悶着。
「佐々木さんも絶対あれ、面白がってわざとやってるよな」
ブツブツと一人ごとを言いながらシャワーを浴び、バスルームを出たところでいきなり灯りが消えた。
「え……か、河崎さーん」
手探りで歩き出そうとして、ガツン、とドアにぶつかった。
「……ってぇ……」
額と足のつま先を思い切りぶつけたらしい。
「おい、浩輔、大丈夫か!?」
河崎の声が近づいてくる。
「はい…ちょっとぶつけただけで……」
「そこ、動くな」
すぐ傍に河崎の気配がして、ぼうっとライターの灯りが灯ると、腕に抱き込まれた。
「停電……?」
「らしいな。雷、どっか落ちたんだろ。ったく、自前の発電機くらいねぇのか! 今度文句言ってやる」
本物が落ちたのか……。
河崎のライターの灯りを頼りに、そろりそろりと動く。
河崎の部屋のベッドまで辿り着くと、浩輔を座らせ、河崎はクローゼットをライターの炎で照らしながら、ハンディライトを見つけ出して点けた。
さっきまで窓から見えていた灯りの渦も、音のない闇の中に沈んでいる。
エアコンも止まっているから、徐々に温度も上昇する。
「お前も飲め。佐々木の差し入れ」
嫌みを口にしながら、河崎がリビングからドンペリのボトルとグラスを持ってくる。
「お誂え向きに食べ頃のコースケちゃんが、据え膳だし」
浩輔は自分が素っ裸だということを思い出して、わあっと、一気に赤くなる。
「こういう時はやることはひとつだな」
さっさとバスローブを脱いだ河崎がベッドの上に浩輔を引き寄せる。
「俺って、シャンパンのつまみですか…」
「上等じゃないか」
ふん、と鼻で笑う。
さやかに言われなくても、河崎は浩輔への独占欲は十分自覚している。
一度手元から離れていった事実が、知らず焦燥感を強くするのだ。
灯りはなかなか点かなかった。
闇に紛れて熱い吐息が重なる。
「あっ、あっ……河崎さ……も…だめですってば……」
「なーに言って…これからじゃねぇか…。そうだろ?……」
耳朶を嬲る河崎の言葉はダイレクトに浩輔の内側にぞくりと響き、暑い空気に唆された情念は当分おさまりそうになかった。
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