好きだから55

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「しゃべらないとまともなんだよな、あいつ」
 隣でカットを見ていた良太が茶化して言ったのを思い出した。
 初めて沢村を映像にした仕事だった。
 そうやって沢村と創り上げていく時間は至福の時だったのだ。
 気づくと、佐々木はそこに立ち尽くしていた。
 電光掲示板の沢村がぼやけるのを感じて佐々木ははっと我に返る。
 あかんわ、何やね、これ。
 慌てて溢れそうになっていたものを手の甲で拭いながら、再び歩き出した。
 
 やっぱ………会いたいな。
 最後に、いっぺんだけ……。

 


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