好きだから60

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 ジャイアンツの正捕手で過去ゴールデングラブ賞を受賞している爽やかイケメンの右投右打小森、チームは最下位に終わったが今期本塁打王スワローズ右投右打の山本、今期急成長したレッドスターズの若手右投右打八木沼、今期打率、打点王獲得、右投左打タイガースの沢村の四名は特にコアな主に女性ファンから独身イケメン四天王などと呼び称される人気選手で、この四人が紹介されると一段と黄色い声があちこちで上がる。
 紹介された選手が特設ステージへと走っていく。
 近いと言っても選手の顔がわかるような距離ではないが、ステージのようすは外野の大画面に映し出され、ステージに上がった選手一人ひとりがクローズアップされると、歓声が大きくなる。
 佐々木の隣にはおとなしそうな女性二人が座っていたが、八木沼と沢村が紹介された途端、思わず耳を塞ぎたくなるような声を上げた。
 稔もスワローズの山本や捕手の嶋田が登場すると、うおーーっという声と共に選手の名前を叫ぶ。
 最初から気後れした佐々木だが、画面に紹介された沢村の顔がアップになり、マスコミ向けには素っ気ないというその声が会場に響くと、身体が硬直した。
 しばらく耳にしていなかったその声は、佐々木の胸の奥までも浸透していく。
「クッソ、あの沢村のヤツの打率がもちょい低けりゃ、山本が二冠だったのによ!」
 稔が声を張り上げた声に佐々木が我に返ると、左隣の女子が佐々木越しに稔にかみついた。
「それだけの実力しかなかっただけじゃん!」
「フン、わりぃな、ホームラン競争できっちり実力をみせてやるぜ!」
 稔が身を乗り出すようにして、佐々木の隣の若い女子に言い放つ。
「ちょと、稔さん、大人気ない!」
 佐々木が窘めると、稔は仕方なく身体を引っ込めたが、隣の女子も稔もテンションは下がっていないようだ。
 プログラムはホームラン競争から始まった。
 五人の選手が十スイングでホームランが何本出るかを競うのだが、あらかじめネットファン投票を募った上で選出されている。
 ホームラン王スワローズの山本、タイガース沢村、レッドスターズ八木沼、ホワイトベアーズ水谷、ジャイアンツ北野と、大柄のパワーヒッターがずらりと並ぶ。
 北野がまず打席に立つと、観客は一気に盛り上がる。
 十スイングという限られた中で、北野は最後のスイングで何とか三本のホームランを揃えた。
 二番手の水谷が二本で終わると、次にホームラン四本で締めくくった八木沼に対して声援と共に黄色い声が会場に乱れ飛ぶ。
 そして沢村が打席に立つと、また場内が沸いた。
 大画面に沢村の真剣な表情が映し出されると、佐々木は声援どころか何やら自分までが打席に立っているかのような錯覚に思わずぐっと拳を握りしめる。
 そして初っ端から沢村の打ったボールは大きな放物線を描いて外野上段まで運ばれた。
 入った途端、場内がどよめく。
 沢村が豪快にスイングすると同時に、佐々木は心の中で入れ、入れと喚いていた。
 テレビ画面で見るゲームとの違いはこの臨場感だ。
 ゲームはやはりスタジアムで観戦した方がいいに決まっている。
 最後のフルスイングでライナーで入ったホームランが計五本目となり、最後にホームラン王を残してトップに立った。

 


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