図書館の横の非常口からしか上には上がれないことになっている。
古い時計塔の中など滅多に誰も入ることはない。
足音をさせないよう用心深く石段を上がる。
暗がりにバッシュを踏み入れる。
どこに桜庭がいるのかわからない。
「桜庭」
声をかけると、ひっと息を詰める気配がした。
「俺、藤原だ」
「来るなよ!」
ギシと床が鳴る。
「ここで死んだら犬死だろう、考え直せ」
七海は一歩前に出る。
「お前にはわからない。俺はもう死ぬしかないんだ。来るなっていってるだろ!」
「じゃあ、死ぬ前に、志央さんの居所を教えろ! 志央さんが掴まった。早く探し出さなけりゃならないんだ!」
「城島さんが!?」
桜庭は驚いて聞き返す。
「そうだ! 黒幕は誰だ? そいつはどこにいる?」
慎重に七海はまた一歩前に進む。
「あいつは……城島さんに執着していたからな…ずっと」
「あいつって誰だ…?!」