妙に勢い気味に、俺も行く、と沢村は駄々こねのように喚いている。
「藤堂さん、実は友人が来てもいいかって言うんですが」
良太は一旦携帯を切ってカウンターに歩み寄る。
中でバーテンダーよろしくカクテルをシェイクしている藤堂は、「どうぞどうぞ大歓迎」と笑った。
下柳がもしかしたら来るかもと、出迎えた藤堂に伝えた時も気軽にどうぞ、だったのだが、そんなに簡単に誰でも招き入れていいのかと、良太の方が心配になる。
だが、ああ見えて隙のない藤堂のことだ、ガードマンも表にいるし、いざという時の対応はちゃんと考えていそうだ。
何より信用を寄せられているのだと思う。
「そうそう、さっきのお土産の最中、早速いただいちゃったよ、一つ。品のいい甘さと小豆の歯ごたえがたまらない美味しさだねぇ。こないだ良太ちゃんから聞いてたから是非食べてみようと思っていたんだが、ちょっと忙しかったからね。うん、今度ぜひ買ってみることにするよ」
今回は何も持ってこなくてもいいと言われたのだが、パーティにお邪魔するのに手ぶらというわけにもいかないと、東洋商事に引き続き、『やさか』の最中を用意した。
最中はちゃんと浩輔の手によってテーブルのスイーツと一緒に並べられている。
良太が沢村に携帯で連絡を取っていると、藤堂の手元のドアフォンにランプがついた。
「はい、下柳さん、どうぞどうぞ。え、山内ひとみさん? そりゃもう歓迎いたします」
山内ひとみの名前に、良太は思わず藤堂を振り返る。
うっそーーー! ヤギさんに話してしまったんだから、当然それもあり、だったよな~
「あら、良太ちゃん、久しぶりぃ! 会いたかったわ」
「あ、はい、いつもながらお元気そうですね」
やってきたひとみの大仰なハグに良太は苦笑い。
「今日も可愛いわ~、良太ちゃん」
胸元が大きく開いた黒とパープルがビビッドなエミリオ・プッチのドレスがよく似合う。
ひとみは藤堂とは初対面だったが、河崎とは面識があるらしい。
当主の河崎は出張でまだ帰ってきていなかった。
「おお、デュデ・ノーダン、ヴィンテージものですね」
藤堂がひとみの持ってきた二本のワインに感嘆の声をあげる。
「こないだ何本か、知人からもらったのよ、美味しかったから、みんなで飲みましょう」
「お心遣いありがとうございます」
「ヤギちゃんは、ほら、好きな焼酎もらったら」
隣ではひとみをエスコートしてきたというにはかなり不釣合いに見える無精ひげとジーンズの下柳が、出迎えた浩輔に煙草はいいかと聞いて、喫煙コーナーを教えてもらっている。
「わかりました。では、こちらはあとでいただくことにして、美味い甲州ワインがあるんですよ、いかがです?」
「いただくわ」
「ヤギさん、お疲れ様です。スタジオは?」
良太が声をかけると下柳がにやっと笑う。
「おう、良太、ちょっと抜けてきた。俺が横でああだこうだうるさく言うもんだから、編集できねぇってさ」
下柳は藤堂から焼酎の入ったグラスとワインを受け取り、ひとみにワイングラスを渡すと、そのままひとみに腕を取られて料理が並ぶテーブルへと歩いていく。
「藤堂、皿空いたから料理取り替えるぜ」
悠が大きな皿を手に藤堂に声をかける。
「大丈夫かい? 悠ちゃん」
「ガキ扱いすんな!」
上目遣いに悠は言い放った。
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