Moon Light3

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 先月末、CM撮影でイタリアに同行した工藤は良太とともに一旦帰国したのだが、ほとんどとんぼ帰りのように再びローマ、リヴィエラに飛び、イタリアロケが終るとその足で一人ミラノからニューヨークに渡った。
 そちらはLA、ニューヨークと東京を結んだドキュメンタリー番組の撮影だ。
 いくらなんでもちょっときつ過ぎ、工藤さん。
 帰ってくるまでに、やれることは俺がやっておいて、少しは休養してもらわなくちゃ。
 工藤のためならなー
 俺って健気、なんて思って良太はひとり顔を赤くする。
 何といっても、実のところ工藤と良太の関係はただの社長とその秘書というだけのものではない。
 その関係は一見すると世間でいう恋人同士だからだ。
 その実、工藤はどうか知らないが、良太にしてみれば工藤一直線だ。
 社内、及びごく一部の人間たちの間では公認ということになっている。
 ただ、イタリアの加絵と工藤のことが、良太は気がかりだった。
 加絵は工藤の高校のクラスメイトであり、今回のCM、及びドラマの撮影にヴィラを提供してくれたイタリア在住の美人デザイナーだ。
 向こうの富裕な貴族と結婚したが、その夫亡き後は悠悠自適なメリーウィドウで、しかもどうやら数年前工藤と向こうで付き合ったことがあったらしい。
 お陰で八月のイタリアでは工藤と良太はすったもんだのあげく、秋山らのはからいで三日間ほど二人きりの時間を向こうで過ごすことができたのだが。
「知り合いと会ってる。明日は十一時の便でこっちを発つ。そっちは何も問題ないか?」
 良太がうだうだそんなことを思い起こしていると、工藤から良太の携帯に電話が入った。
「全然大丈夫です。何便ですか? 到着予定は?」
「UA801、成田十四時着だ」
「わかりました。じゃあ明後日お迎えに上がります。お気をつけて」
 今は朝の十一時だから、ニューヨークは夜の十時頃だろう。
 電話の工藤は相変らずそっけない。
 それでも、毎日電話を入れてくれるのだからいいとしよう。
 知り合いってだれだろう、と良太が呟くと、傍にいた秋山が、「ああ、それ佐古さんじゃないか?」と言う。
「工藤さんの大学の同期で、アメリカン証券のエグゼクティブ・マネジャーの」
「へ、大手の? すげー人がいるんだ、工藤さんの同期って」
「ああ、実は俺も前に会ったことがあるんだ。陽気な人だよ。奥さん、アメリカ人でさ。工藤さん、株のことでは佐古さんを全幅の信頼をおいてるからな」
「へえ。そうなんだ」
 ここのところ、工藤に信頼されている、という言葉に、少々敏感になっている良太である。
 できれば、自分も工藤に信頼されうる人間になりたいと思うのだが。

 


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