Blue Moon19

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 夜の雨が冷たかった。
 それでも頭を冷やしたくて、雨の中を歩いた。
 まだがくがくする足を引きずって乃木坂につくと、オフィスの明かりは消えていた。
 良太は力なくエレベーターのボタンを押す。
 さっきまでの緊張が解けると、泣くもんか、と思う傍から涙が溢れ、髪を濡らした雨の雫と一緒に頬を伝う。
「このバカが! お前はどうしてそう学習能力がないんだ!」
 七階に着いてエレベータが開いた途端、いきなり怒鳴られた。
「データを盾に、脅されたんだよ、バカヤロ! 何で……何で来てくんないんだよぉ」
 工藤のを見た良太はへなへなと床に膝をつく。
「泣くな! ったくいつまでもガキだな」
「っせえや」
 悪かったな、ガキで、涙が出るんだから仕方ないだろ。
「佳乃さんが大事だったら、ちゃんと言えばいいだろ。ごまかして、俺の気持ちを弄ぶなよ……ばかやろ………」
 ふう、と良太の頭の上で工藤のため息が聞こえた。
 七時頃、アスカらとオフィスに戻ってきた工藤は良太と連絡を取ろうとしたが、携帯をまた切っているのに腹を立て、「一体どこで油売ってるんだ!」とテーブルを拳で叩いた。
「工藤さんが、あの佳乃って人にデレデレしてるから、良太に愛想つかされたんじゃないの?」
 またまた歯に衣着せぬもの言いでアスカが睨む。
「そういや、さっき昼過ぎに寄った時、良太、霧弥に会いに行くって出かけたって、鈴木さんが言ってたな」
 一緒にスタジオから戻ってきた俊一がボソリと言う。
「何だと?」
 実は良太のことを心配した小笠原から、霧弥とのことで、良太が工藤には話していなかったやり取りを耳にして気にはなっていた。
 携帯を切るなど、何かなければ良太の性格上あり得ない。
 ホテルに問い合わせても、霧弥のことを教えようとはしない。
 工藤は今度は必死になって野元を探して連絡を取ったのだ。
「野元に借りを作ったぞ」
 頭を下げて無理やり霧弥の部屋を強襲させた。
 データを盾に良太に無体を迫っているかもしれないと話すと、霧弥ならやりそうだと野元は笑い飛ばした。
 だがすぐに、「ドンペリでも持って、俺が行ってみるよ」と腰を上げた。
 ずぶぬれの良太の腕を取って部屋に入るとそのままバスルームに直行する。
「ったく、このバカが……」
 素裸にした良太の身体を引き寄せてしばし抱きしめ、工藤は愛しげに良太の頭に唇をうずめる。
「佳乃は、兄貴が殺されてから事件が解決してもしばらく立ち直れなかったんだ。だから、すがってきたあいつを邪険にはできなかった」
 シャワーの下で、良太は身を堅くする。
 やっぱり……。
「今回も兄貴や両親の法要で、昔に戻りかけたんだろう。俺が勧めてもう何年かカウンセリングを受けているが、また危ない精神状態でフラフラしてるんだ」
 自分も服を脱いでバスルームに戻ると、工藤は良太の首から胸へとキスを落とす。
「勘違いするな。万が一のことを考えると励ますことも突き放すこともできなくて、ただ抱きしめてやっただけだ」
 そして唇を重ね、工藤はゆっくりと可愛い良太との口づけを味わう。
 指で愛撫すると、すぐに若い肌に火がついた。
 ああ………ん。
 良太の吐息が甘くなる。

 


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