Blue Moon3

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「佳乃さんがまたここに駆け込んできたのはそれから数日後のことよ。お兄さんはただ喧嘩に巻き込まれたんじゃない、殺されたんだって言って」
「殺された?」
 良太は思わず声を上げた。
「そうそう。ちょうどそこに工藤さんを訪ねて千雪さんがいらしててね」
 佳乃は持ってきた博也の携帯から、博也の死の直前、佳乃あてのまだ配信されていないメールがあり、両親は信頼していた知人に騙されて事業に失敗して自殺したのだということやそれを調べているというようなことが書かれてあったというのだ。
 警察に何度も訴えたところ、ちょっと調べたようだが、佳乃には事件性がないと突っぱねたという。
 佳乃は弁護士を紹介して欲しいと工藤に頼み、居合わせた千雪も佳乃の話を聞くことになったらしい。
 これはあとになって良太が千雪に聞いたことだが、メールにはクラウドにデータがあるとも記載されており、そのIDはYOSHINOだったが、パスワードは佳乃の生年月日のアナグラムになっていて、千雪がそれをつきとめ、クラウドにあったデータから、両親が自殺したこと、さらに父親を騙した人物とその周辺を博也が調べた詳細を引っ張り出した。
 それをもとに千雪から警視庁捜査一課の渋谷に証拠書類が渡され、犯人は捕まり、博也は喧嘩に巻き込まれた風を装って殺させたことを自白した。
「じゃあ、佳乃さん、千雪さんとも顔見知りなんだ?」
 良太が聞くと、鈴木さんは首を傾げた。
「顔見知り? うーん、眼鏡かけてたわねぇ、千雪さん。とにかく、事件は解決したんだけど、佳乃さん精神的に疲れちゃったのね、それからしばらく割と工藤さんに甘えてたみたい。そのうちアメリカ行っちゃったのよね」
 いずれにしても佳乃と工藤は幼馴染であり、事件のことがあったせいか知らないが工藤にとって佳乃は甘やかすべき存在だということだ。
 鈴木さんの言うしばらくの間に工藤と佳乃の間にどういう関係があったか、良太はついつい邪推してしまう。
 たったさっきまで、和気藹々とおしゃべりしていた佳乃だが、何だか加絵や田所夫人のような有閑マダムとかとは違う、工藤にとって大事な存在なのではないかという気がしてくる。
 千雪も大切な人に違いないが、あの人にはまた大事な人がいるわけだし。
 
  
 

 
 
 昨夜、工藤のいきつけの小料理屋で食事をしたあと前田のバーに寄ったのだが、翌日から工藤がいなくなると思うとつい淋しい気持ちをごまかすためにいつもより飲んでしまった。
 そのあと会社の上にある工藤のプライベートルームのベッドで、気になっていた佳乃のことを良太はちょこっと口にした。
「あの人、佳乃さん、工藤さんの幼馴染だってね。お兄さんの事件、千雪さん解決したって聞いたけど」
「また、鈴木さんだな、お前もこのクソ忙しい時にそんなおしゃべりにつき合ってんじゃない」
 あ、ごまかしやがったな!
 まだ何か言おうとした良太の身体を工藤の腕が抱きすくめる。
 酒のおかげと工藤の体温にくるまれているせいか、ふわふわと身体は心地よくて。
 ごまかしでも何でも工藤が身体を繋ぎ、その熱で身体の内側から焼かれると良太はもう何も考えられなくなった。

 


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