Blue Moon7

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 世界自然遺産に登録された知床半島の四季を追うという内容で、下柳がもう何年もライフワークとして撮りためてきたものをたたき台にスタッフを組んで撮影に入る予定になっている。
 メインスポンサーである東洋商事の提案する環境と自然を重視したテーマで進めることになっているのだが、このプロジェクトには良太もプロデューサーとして参加しているわけだ。
 あくまでもありのまま自然を映像化するというのは大前提だが、そこに『人間』の目線を入れたらどうかという案を出したのは良太だ。
 ナビゲーターというものではなく、時折思い出したように目の前の大自然を見ている側の『人間』のカットを入れ、ナレーションとも違う『声』を入れる。
 下柳も面白いからやってみるか、今までのドキュメンタリーとは一味違うものにしたいし、と乗り気である。
 さらにその人間としてやはり下柳自身が出るのがいいのではと良太は言った。
「マタギみたいで面白そう」
「バカ言え、だから俺のきたねぇツラ、画面にさらしたらたちまちチャンネル替えられっちまわ。それより、良太、お前がいいんじゃねぇ? うん、それがいいぞ。視聴率も多少上乗せできるかも知れん」
「冗談じゃないですよぉ、俺なんて。第一、とてもそんな余裕ありませんて」
 やっぱな、と下柳はしばし考え込んだ。
「なあ、お前ンとこの小笠原、都合つかねぇ?」
「え、小笠原、ですか?」
「おう、都会的なくせにちょと野性味もありそうってな、やつがイメージぴったりなんだ。撮るんなら実際現地まで同行してもらわにゃならねーが。できりゃ、春夏秋冬? 撮影はタイトにビシッとすませるから時間はかけねぇつもりだが」
 下柳の中には、そのイメージができあがったようだ。
 なるほど、と下柳の言いたいことに納得した良太はタブレットに向かって小笠原のスケジュールを確認する。
「小笠原が、そんなとこ、たるいから行かねえとか言わないで、ウンと言ってくれさえすればおそらく調整はつくかと思いますけど……問題は予算ですよね~ヤギさんだったら何とかなっても、小笠原となると……」
「そこはそれ、良太ちゃんからうまく言ってくれれば小笠原のことだから。でなきゃ工藤に頼んでさ。資金調達はなあ、うん、良太ちゃんの腕の見せどころというか。スポンサー、軽く乗せてだな」
「それこそ、軽く言わないで下さいよぉ……このプランがお気に召さなければお流れですし。まあ、何とかやってみますけど。とりあえず工藤さんにも相談しなきゃ…」
 それじゃあよろしく頼むわ、と言うと、下柳はそそくさとジーンズ姿のひょろっとした身体を急かしてまたテレビ局内に消えた。
 
 
 
 
 オフィスに戻ってから小笠原のマネージャーである真中に連絡を取ると、夕方二人とも次のスタジオに入る前にオフィスに立ち寄った。
「まあ、良太ちゃんのたっての頼みってなら、一肌脱いでやってもいいぜ?」
 良太が下柳とのプロジェクトの詳細を話すと、小笠原は恩着せがましい言い回しで笑った。
「スケジュール、空いてるところにぶっこんでくれれば」
「よかった! って、まだ実はスポンサーの交渉これからだから、それ次第ってやつなんだけどさ」
 ほっとして良太は胸を撫で下ろす。

 


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