ACT 3
霊感だの予言だの、そんなものは極力信用していないし、現実として目の前に現れない限りは認めることはしない主義だ。
だがいやな予感というのは、工藤の主義主張にかかわらず、そんなはずあるかと思いたい時に限って決まって的中したりするものなのだ。
日本に向かうアリタリア航空の機内で、三列前あたりを睨みつけながら、工藤はいまいましげに舌打ちした。
工藤プロデュースでKBCテレビの創立五十周年記念番組として五月に放送されたドラマ「大いなる旅人」第一弾、六月の第二弾はともに予想を上回る高視聴率をマークし、急遽その続編をつくることになった。
そのロケでスペイン、イタリアに同行した帰りである。
ドラマは巨大コングロマリット東洋グループの東洋商事とのタイアップで制作され、同じくグループ傘下にある東洋証券のCMに起用されている青山プロダクション所属の人気俳優、志村嘉人主演で、過去と現在を行き来しながら謎を解いていくというSFテイストのシナリオになっている。
第一弾はルーブル美術館にある絵画を巡ってパリと東京を舞台に、第二弾はスペインが主な舞台でガウディのサグラダ・ファミリアの謎を解くというものである。
同じく脇で出演していた青山プロダクション所属の若手、南澤奈々の演技も光った。
第三弾となる今回、その奈々も前作より出番が増え、志村といい波長で撮影が進んでいた。
今回はスペインからイタリアに移り、過去と現在を行き来しながらレオナルド・ダ・ヴィンチの絵を巡る謎を解いていく。
既に第三弾の視聴率次第では第四弾でギリシア、ローマの古代文化を扱うことも決まっている。
仕事が順調なのはいいが、工藤にしてみればまさしく自分があと二人くらい欲しい忙しさだ。
エリート商社マン時代、会社で手痛い裏切りにあったことがトラウマになっているのか、中川アスカのマネージャーを務める秋山は、裏では工藤にああしろこうしろと注文をつけるくせにこれまであまり前線に出てくることはなかった。
だが今回はそんなことを言っていられない状況に至っている。
「アスカのスケジュールはお前に一任するからな」
スペインに発つ前、秋山を呼んで工藤は言った。
「しかし、工藤さん!」
「生きるか死ぬかくらいなことでもない限り、俺へのお伺いは無用だ」
反論しかけた秋山を遮って、工藤は言い渡す。
「知りませんよ、俺のせいで会社が大損こうむっても」
「いい加減にしろ。良太のバカを見習って、たまには回りを考えずに突っ走るくらいやってみるんだな」
秋山はそれには苦笑いして、アスカとともにNYに発った。
そして当の良太だ。
霧弥の一件もあり、また何かトラブルに巻き込まれたりしないかなどと心配がなくもなかったのだが、もはやどうにも工藤だけでは動きが取れないことは明白で、あとの仕事を良太に押しつけるように渡欧した。
良太は良太であれやこれやと押しつけられてブーブー文句を言っていたが、何とかやっているようだ。
あいつの場合は、むしろやり過ぎて気づかずに体を壊すことの方が問題だ。
またここしばらく、電話のやり取りだけでろくに顔も見ていない。
仕事は何とかなるだろうが……………。
小笠原がどうやら工藤と良太のことをかぎつけて、何やら工藤に敵対心を燃やしている。
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