だが大概、そんな良太の心も知らず、工藤はビジネスライクな調子で返してくるだけだ。
「明日、四時に東邦火災だ。高畠と会って話、詰めておけ。結構タヌキだからな、丸め込まれないようにしろ。お前がいくことは伝えてある」
「えっとぉ、四時に、東邦火災、ですね~、高畠さん、っと…」
常備してあるメモ用紙にたどたどしい字でメモをとる。
「なんだ、飲んでるのか?」
「へ? へへ、小笠原とちょっと」
「小笠原だ? そこにいるのか?」
電話の向こうの工藤の声が大きくなった。
「らいじょうぶですって、小笠原、明日オフだって」
「お前は仕事だろうが! 小笠原なんかさっさと放り出して寝ろ!」
ピッッッ!!!!
「なんだよ、横暴シャチョー! 自分はよろしくやってんだろーがっ! キショーメ!」
既に切れている携帯に向って、良太は悪態をついた。
「ちょ、良太、大丈夫か?」
携帯をポイとその辺に放り、良太は小笠原の手からボトルを取ってグラスに並々とそそいで、ぐいっとあけた。
「うるはい! せっかくいい気分で飲んでたのにさっ!」
早いピッチで飲んでいた良太は怒った拍子にかなり酔いが回り始めていた。
そのうち「飲むぞぉ、今夜はぁ」などと埒も無いことを口にしながら、良太は絨毯の上に大の字に眠ってしまった。
「こら、良太、起きろよ」
ゲシ、ゲシと足を蹴られながら、良太はずーんと石のように重い頭を働かせる気力が今ひとつおきないでいた。
バカ飲みして潰れたらしいことはなんとなくわかっていたが。
小笠原が工藤の女の話や霧弥の話なんぞをふってくれたおかげで、佳乃や加絵、それに霧弥やらの顔が現れては消え、夢の中で冷や汗をかいていた。
「良太ちゃん、起きないと襲っちゃうぞ~」
急に何かがのしかかってきて、次にはチュパッという音とともに、何か柔らかいものが唇に触れて離れていく。
…………………………ちゅぱ??????
ぱちっと目を開けると、間近に二つの目。
工藤……? であるはずがない。
オガサワラ………?
アルコールのせいでかなり巡りが悪くなっていた良太の脳の伝達網がようやく起動しはじめる。
「夕べはよかったぜ、良太」
さらっとドラマのイロ男のようなせりふが良太を見下ろす小笠原の口から飛び出した。
「………な、な、何言って……」
気づくと二人とも上半身裸、しかもジーンズのジッパーがおりている。
慌てて小笠原の下から這い出そうとした良太だが、力任せに引き戻され、すっぽりと抱き込まれる。
「なんかこう、抱きゴコチいいんだよな、良太って」
首筋に息を吹きかけられて頭に血が上る。
「…んのバカ、離せよっ!」
ありったけの力で小笠原を引き剥がすと、良太ははいつくばって壁際に逃れ、肩で息をする。
ナータンはとっくにタワーの上に避難していた。
小笠原も体を起こしたが、にやにやとのんきそうに煙草に火をつける。
「それそれ、そうやってじーっと見つめられると、そそられるんだな」
「睨んでンだよっ! てめぇ、ま………まさか………まさか……」
直視したくないシチュエーションに、良太の頭の中はパニクるばかりだ。
それを見た小笠原の高笑いが部屋中に響く。
「何がおかしんだよっ!」
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