Isla De Pinos8

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 小笠原の煙草のきつい煙が喚く良太の鼻をつく。
「まあなあ、あんな無防備に美味そうな顔して目の前で寝られたら、つい襲ってやりたくもなるわな~」
「こんのやろぉ! てめ、人の断りもなしに……」
 近づくに近づけずに、良太は拳を振り上げる。
「こらこら、あのさ、やったんだったら、やられたお前さん、なんか痕跡があるだろーが?」
 言われて良太はうっと言葉に詰まる。
 人を食ったような薄笑いを浮かべる小笠原を睨みつけながら、どうやらからかわれたのだとわかった。
「俺で遊ぶな!! お前と違って俺は忙しいんだ! とっとと帰れよ! ここは禁煙!!」
 ベッドのそばの目覚ましは八時半をさしている。
 頭痛は少しずつマシになってきているが、アルコールがまだ抜けきっていないようだ。
 良太が冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、ごくごくと半分ほど飲み干すと、小笠原が、「あ、俺にもくれよ」と良太の手からボトルを取り上げて、全部飲んでしまう。
「せっかくのオフなんだから、こんなとこでぐだぐだ人をからかってないで、帰れよ」
 なかなか出て行こうとしない小笠原を横目で見ながら、良太はジーンズを履き替え、Tシャツをかぶると、スニーカーを履いた。
「どっか行くのか?」
「下のトレーニングマシンでちょっと汗流すんだよ」
「ああ、そういや、ここ、設備だけはしっかりしてるよな。たまに、アスカもエクササイズやってるとかって。あいつダンスだけはうまいな」
「バレエだろ? ジムとかよそのスタジオとかだと人がいっぱいでいやなんだってさ。俺も会社入ってからこっち、ろくに運動やってなかったから、なまっちまってるし。何より、タダで使わせてもらえるからな」
 良太は小笠原を振り返り、「帰るんなら、別に鍵は開けといてもいいから」と、タオルを持ってドアを開ける。
「あ、おい、待てよ」
 階段を降り始める良太に、やがて小笠原も追いついた。
「俺もやる」
「ジム行ってるんだろ?」
「いいじゃん、別に。な、な、俺と恋に落ちてみる?」
「ああ?」
 何の脈絡もない切り替えしに、階段を降りながら良太は眉を顰めて小笠原を振り返った。
「無理強いは嫌いだが、俺と恋すれば、とことん大事にしてやるぜ? 出血大サービス!」
「大売出しのキャッチコピーか、お前のコイってのは」
 トレーニングルームまで降りた二人は、良太の持っていた鍵で中に入り、灯りをつけて空調をきかせる。
 エアロウォーカーで二人並んで歩きながら、「だからさ、ためしに俺とどう?」と小笠原が口を開く。
「ジョークも大概にしろよ」
「ジョークなもんか、俺は本気になったら、無制限一本勝負、だぜ? な、どうよ、良太?」
「まだ夕べの酒が残ってるのか? オフならとっとと帰って寝ろ! 俺はこれから仕事なの」
 呆れてまともに返事をする気にもならない。
 しばらく走ったあと、ベンチプレスに向かうと、小笠原もついてきて、隣のマシンを使い始めた。
「工藤もここ使ってる?」
 ちょっとまじめに体を動かしていたかと思うと、また小笠原が口を開く。
「たまに。でも、工藤のマンションのがフィットネス完備だから、プールもあるし」
 あれだけ忙しく動いているのに、睡眠をとるより体を動かすことだけは欠かさないらしい。

 


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